【欧州で脱「脱原子力政策」進む 米DOE】

米エネルギー省(DOE)内にある独立の統計分析機関であるエネルギー情報局(EIA)は7月に「国際エネルギー見通し(IEO)2010年版」を刊行した。

07年から35年までの世界のエネルギー消費量が49%増加すると予測したもので、この間特に、再生可能エネルギーによる供給量が急速に伸びる一方、既存のエネルギー政策の下では化石燃料がなおも、エネ消費の4分の3以上を賄い続けるとの見方を示している。原子力については、欧州で脱原子力からの政策転換が進むと見ており、OECD諸国の原子力発電量も前年版の「減少」から一転して「増加」と予測しているのが特徴だ。

07年から35年までのエネルギー消費量の増加分は主に途上国の経済成長が後押ししたもの。07年は世界的な経済不況が始まったが、09年もその状況は変わらず、世界の短期的なエネルギー需要に多大な影響を及ぼした。物やサービスに対する消費者と製造業の需要が低下するのに合わせ、エネ消費量も08年に1.2%、09年見込みでも2.2%縮小。経済状況が回復すれば、経済成長率も下降前のレベルに戻ると多くの国では見ており、07年に495クアッド(=1000兆)Btu(英国熱量単位)だった総エネルギー需要量は35年に49%増の739クアッドBtuになると予測している。

世界的な経済不況の中でも中国とインドでの影響は非常に小さく、将来的にも世界の経済とエネルギー需要を伸ばす原動力となる模様。07年に世界の総エネ消費量に占める両国合計の割合は20%に達しており、標準ケースで両国のエネ消費量は35年には倍増し、全体の3割を占めるまでに伸びると予想される。これと対照的に、米国のエネ消費量が世界の総需要に占める割合は07年の21%から35年には16%に下落する。

〈原子力発電〉

原子力による発電量は07年実績で2兆6000億kWhだったのが20年に3兆6000億kWh、35年には4兆5000億kWhに増加していくと予測される。

世界では、電源の多様化やエネ供給保障、低炭素の代替電源確保といった側面から原子力への関心が高まっているが、建設計画にともなう不確実性が多大なことも事実。原子炉での安全確保や放射性廃棄物処分、高騰する建設費、投資リスク、核拡散の懸念といった課題が将来の原子力拡大を遅らせると考えられる。

それでもなお、標準ケースは前年版より原子力の数値が改善されると予測。30年の発電量は前年版の予測値より9%高くなる(図2)。

地域別では、アジアの非OECD諸国で、07年から35年までの間に原子力による発電量が年平均7.7%増加。特に、中国とインドではそれぞれ、8.4%と9.5%という高い伸びになる計算だが、中米および南米地域でも4.3%という伸びが期待される。

一方、欧州のOECD諸国での原子力発電については、2009年版の数値を大きく改訂した。なぜなら、この地域の多くの国で原子炉の閉鎖や新規建設モラトリアムといった政策から転換しつつあるため。前年版では原子力による発電量で若干の低下を予想していたが、最新版の標準ケースは年率0.8%で増加していくと見ている。


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