FNCA大臣会合 原発導入課題も研究 カザフとモンゴル新参加

アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合が11月18日、北京で開催された(=写真)。和田隆志・内閣府大臣政務官、陳・中国国家原子能機構(CAEA)主任、マレーシアのオンキリ科学技術・革新大臣、フィリピンのモンテホ科学技術大臣、ベトナムのティエン科学技術副大臣など、12か国の大臣級の代表が一堂に会した。日本からは、近藤原子力委員長、尾本原子力委員、梶田内閣府審議官、森山文科省審議官、中村内閣府参事官らも参加した。今後、FNCAは、新たな2つを含む10のプロジェクトと原子力発電導入国への効果的な協力を中心に計画を進めていく。以下に会合での合意の一部を紹介する。

〈カザフスタンとモンゴルが新メンバー国に〉

世界第2位のウラン資源量を持ち、進んだ原子力研究の成果をもつカザフスタンと、同様にウラン資源を有し、これから原子力開発利用を本格的に進めようとしているモンゴルの2か国がこの大臣会合から新たにメンバー国としてFNCAに加わった。これで、参加国は12となった。

〈原子力発電導入計画とFNCAの役割〉

ベトナムの副大臣は、首相が今年6月、2030年までの原子力発電長期開発計画を承認したと述べた。これは20年までに初号機を運開し、25年までに800万kW、さらに30年までに1500万〜1600万kWまで拡大し10.3%の電力を供給するという大きな計画である。

インドネシア、タイ、バングラデッシュ、マレーシアの代表もそれぞれに原子力発電の早期導入に向けた着実な取り組みについて語った。

その中で、初号機の円滑な導入には多くの基盤整備が不可欠であり、原子力発電の経験を持つ日本、韓国、中国の協力への強い期待を表明した。その具体的な場としてFNCAの原子力発電のための基盤整備に向けた取り組みに関するスタディパネルに期待が寄せられている。スタディパネルではプロジェクト管理、地元企業の参加、燃料サイクルと廃棄物、研究機関の役割について経験を共有しつつあり、今後、さらに3S、立地、許認可、CDM対応などについても検討を進めることになろう。

また、各国とも原子力発電導入には必要な専門家の養成・確保が最大の課題であるとしており、日本の「原子力人材育成ネットワーク」に対する期待も大きい。

陳CAEA主任は中国では13基(1000万kW以上)の原子力発電プラントが運転中で24基(2000万kW)が建設中であり、多くの経験を蓄積しているので、FNCA協力に活用していきたいと述べた。

〈「RI供給と研究炉利用のネットワーク」に関する新プロジェクト〉

医療用のアイソトープ(RI)Mo99の安定供給、各国が有する研究炉の有効利用を図るため、Mo99などの製造計画、研究炉利用計画、タイとベトナムの新研究炉建設計画などについて情報を共有するとともに意見を交換し、さらに、RIの各国相互間の安定供給のためのネットワーク構築の可能性についての検討を行うため、上記新プロジェクトを設置するとの日本の提案が合意された。

〈「核セキュリティ・保障措置」強化のための新プロジェクト〉

多くの国が初めての原子力発電導入計画を持つ状況に対応して、日本は核セキュリティ、保障措置、安全(3S)が原子力発電計画を進める前提条件であることを強調し、FNCAの中でこれらの課題について経験・情報の共有と政策の検討と必要な人材養成協力などを議論するための「核セキュリティ・保障措置」プロジェクトの新設を提案し、賛同を得た。

〈放射線利用研究成果の実用化促進政策〉

原子力を含む国の研究所の研究成果を有効に産業界で利用するための方策を議論したFNCAセミナーの結果報告を受け、優れた研究の成果を産業化するために必要であるが、コストのかかるパイロット試験装置の設置・試験や農業利用でのフィールド試験などを行うために、国の支援が可能となる制度の検討が必要であるとの意見がまとめられた。FNCAのプロジェクトでは実用化が期待される耐病性バナナ、土壌改良材の製造などもその検討の対象となると考えられる。(町末男・FNCA日本コーディネイター)


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