【企画記事】建設工事が進む「青森の原子力」 核燃料サイクルを支える施設たち

青森県内では現在、幾つもの原子力関連の施設が建設工事を進めており、日々、その様相を変化させている。それらは、いずれもエネルギー資源に乏しいわが国では不可欠な核燃料サイクルを支える施設群だ。

ここでは、その建設工事が進展する「青森の原子力」の現況を紹介したい。

■日本原燃 MOX工場、16年3月完成目指し 再処理と歩調を合わせ、着実に

日本原燃のMOX燃料工場(上北郡六ヶ所村、最大加工能力130トン/年)が昨年10月28日に着工した(=写真)。

「安全がすべてに優先する。安全の確保なくして事業を進める資格はない」同社の川井吉彦社長は、着工に当たり、「災害ゼロ」を目標に建設工事を進めることを訓示した。また、「目指すは世界一のMOX燃料工場」として、安全・安定操業に加え、高品質・低価格のMOX燃料を製造する日本初の商業用施設の実現に気概を示した。

六ヶ所再処理施設に隣接して設置されるMOX燃料工場では、再処理で回収したプルトニウムを、国内軽水炉でのプルサーマル発電で利用するMOX燃料体に加工する。

MOX燃料工場は、16年3月のしゅん工を目指し、今後、建設工事が本格化、再処理施設と歩調を合わせ、着実な事業の進展が期待されている。

なお、海外で再処理し回収されたプルトニウムについては、海外でMOX燃料体に加工された後、国内に輸送されている。

(写真提供=日本原燃)

■電発 大間発電所、建設最盛期へ 今年、原子炉圧力容器搬入

電源開発の大間原子力発電所(下北郡大間町、ABWR、138.3万kW)は、他の軽水炉で従来から使用されているウラン燃料に加え、MOX燃料を全炉心で用いることができるのが特徴だ。08年5月に着工、運転開始は14年11月、燃料装荷は13年12月の予定となっているが、最初は、MOX燃料を全炉心の3分の1程度以下から用い、段階的に割合を増やし、最終的にフルMOX発電を目指すこととしている。

大間発電所は、津軽海峡に面した本州最北端の地に位置し、約130万平方メートルの敷地面積を有しているほか、前面には、3000トン級の船が接岸できる物揚岸壁を設置している。

昨年11月20日現在、工事進捗率は、土木工事58.4%、建築工事30.2%、機械電気工事25.9%で、総合進捗率は27.9%となった。取・放水工事などを行う土木工事は順調に進んでいる。また、原子炉建屋の主要工事の状況としては、09年秋に基礎掘削完了後の国による岩盤検査を受け、建築工事が開始、10年春に中央マットモジュールをつり込み、同夏には原子炉格納容器の一部となる下部鋼製ライナがつり込まれ、その後、建屋内部に設置する機器・配管等を順次据え付けてきた。そして、計画されている建設工事期間のほぼ中間点となる11年の終わり頃には、いよいよ原子炉圧力容器の搬入が行われ、建屋内部の機器の据付工事も本格化することとなっており、現場は正にこれから最盛期に入るといえよう。

しかしながら、本州最北の大間では、ことに冬季は寒冷に加え、強風に見舞われるなど、厳しい自然条件にさらされる。現場では、このような困難な環境下でも、円滑に建設工事を進めるため、原子炉建屋の建設では、工事を行う前、鉄骨支柱を先行して組み上げ、仮設の開閉式屋根とシートで工事現場を覆う「全天候型建設工法」を採用している。屋根の内部には、搬送用の仮設天井クレーンやモノレールなどを配置し、工事現場を工場化することで、天候に左右されず計画的に作業を進めることができる。原子炉格納容器など大型機器の搬入時には、仮設屋根を開閉してつり込みを行う。

また、工場や組立作業エリアで機器・構造物を大きく組み立ててから、つり上げ荷重1000トンの大型旋回式クレーンで据え付ける「大型モジュール工法」の採用で、工事の安全・品質管理にも努めている。同工法は、前述の原子炉格納容器下部鋼製ライナのつり込みの他、タービン建屋の機器・構造物でも採用されている。

当然のことながら、同社では、発電所建設に際して、環境保全についても、植生の保存・緑化、騒音・振動による影響の低減、水質汚濁の防止、資機材の輸送での安全確保、土砂の適切な処理など、十分な対策を講じている。例えば、掘削等により発生する土砂も、できるだけ埋立・埋め戻しなどに利用し、残土は敷地内の土捨場に盛土し緑化するといった環境保全対策を図っている。

このような最近の国内原子力発電所建設現場でみられる最新の建設工法、環境保全対策は、今後、原子力導入を具体化していく新興諸国からも大いに注目されることだろう。

(写真等提供=電源開発)

■中間貯蔵12年7月事業開始予定 建屋基礎版工事が進行

原子力発電で発生した使用済み燃料を貯蔵する中間貯蔵施設「リサイクル燃料貯蔵センター」(むつ市、=完成予想図)が、昨年8月31日に着工した。同施設は、東京電力と日本原子力発電の原子力発電所使用済み燃料貯蔵のため設立されたリサイクル燃料貯蔵(株)が建設・運営するもの。

「リサイクル燃料貯蔵センター」は、当初、3000トン規模の貯蔵建屋を1棟、その後2棟目を建設し、最終的な貯蔵量5000トンを目指す。事業開始は12年7月の予定だ。建設工事は、昨年、杭工事が行われ、続いて、今春にかけ、鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込む基礎版工事が進みつつある。(イメージ図提供=リサイクル燃料貯蔵(株))

■行こう、「元気な青森」へ 新幹線も開業 今、東京にも勢いが

12月4日の東北新幹線全線開業をとらえ、新たな青森ファンを獲得すべく、県では、「行くたび、あたらしい青森」のスローガンを掲げ、東京でも“フィーバー”を巻き起こしている。

新幹線開通1月前となった昨年10月末、「とことん青森in東京」と銘打つ大型観光キャンペーンが、東京の流行の発信地である原宿・表参道を中心として、およそ1か月にわたって開催された。名物「ねぶた」が明治神宮界隈を練り歩く「表参道ねぶた」が催されたほか、期間中、首都圏随所のデパート・スーパーでの名産品直販、郷土芸能披露など、東京を青森県の魅力で埋め尽くす勢いで「青森力」をアピールした。

東京電力でも、首都圏の電力需要を支える青森県と大消費地の東京とをつなぐイベント「でんきのふるさと 青森 下北半島 元気祭り」を、昨秋、有楽町の東京国際フォーラムで開催した(=写真)。ここでは、原子力施設を立地する東通村、六ヶ所村、むつ市の1市2村を中心とした下北半島の特産品販売や観光案内、地元の食材を用いた料理教室などを通じ、地域の魅力をPRしたほか、建設・準備が進められている同社東通原子力発電所や燃料サイクル施設について説明したパネル展示も行われた。

今年は、新幹線でより近くなった「元気な青森」を楽しんではいかがだろうか。


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