原産協会主催 高レベルシンポ 増田・前岩手県知事が課題提起 「国が10〜20か所候補地提案を」

原産協会は12月17日、東京・臨海副都心の日本科学未来館“みらいCANホール”で、高レベル放射性廃棄物の処分問題がいまの状況より一歩でも前に進むために、“地域の関心の芽が育つ環境”を作り上げるための「政治の役割」を取り上げたシンポジウムを開催した。招待者や記者を含め約220名が参加した(=写真)。

開会で同協会の石塚昶雄・常務理事が、これまで2回のシンポジウム「他施設から学ぶNIMBYからP(プリーズ)IMBYへの転換」、「いかにすれば、地域で冷静な議論ができるか」で出された意見や原産協会が行ってきた勉強会での議論も含め、「この非常に難しい高レベル放射性廃棄物処分の問題を、一歩でも前に進めていくためには、政治の役割が大きいのではないか」と述べ、今回のシンポジウムの開催趣旨を説明した。

今回は基調講演に、野村総合研究所顧問であり、元総務相、前岩手県知事の増田寛也氏を迎え、「地域づくりの新たな視点――政府部門との協働をめざして」と題して講演した。

同氏は、約10年間、岩手県知事を務め一般廃棄物や産業廃棄物問題にも取り組んできた経験から、放射性廃棄物の処分は国が責任者であり、一方の当事者であるべきだ、と明快に主張した上で、「一方の受け手は知事だろう」と述べた。また同氏は、「知事と市町村長との信頼関係がないと高レベル放射性廃棄物だけでなく、他の施策もうまくいかない」と指摘。

今後の推進方策について同氏は、公募で市町村長に手を挙げてもらう方式ではなく、「国が10から20か所の地点を示し、その中から進めて行くべきだ」と提案、その前には経産相らが調整して、「首相と全国知事会の会合を設定し、いつまでに決めなければならない問題かをはっきりとさせた上で、訴えるべきだ」と強調した。その際は、地元自治体も真摯に受け止めてほしいし、議会の責任・役割も大きくなる、と付言した。

パネルディスカッションでは、元日本経済新聞社・論説委員の鳥井弘之氏が議長を務め、パネリストとして前新潟県柏崎市長の西川正純氏、中国新聞社総合編集本部・経済部長の宮田俊範氏、東京大学法学部教授の森田朗氏、大阪大学コミュニケーションデザインセンター特任准教授の八木絵香氏が意見を述べた。

鳥井議長からは、パネル討論の論点として、(1)政治主導と言うが、そもそも政治が関心を持っていないのが現状だろう。この点をどう克服できるか、すべきか(2)国と都道府県、市町村、地域コミュニティとのパートナーシップのあり方(3)国策として推進するために考えられる政策手段とは(4)「地方分権」「住民投票」など現代のキーワードとの関連で国の役割はどうあるべきか――が提起され、活発な議論が展開された。

今回は特に、「政治の役割」に焦点を当てたことから、国会議員などにも積極的な参加を呼びかけた。国会閉会中ではあったが、空本誠喜・衆院議員(民主党)が参加し、自ら民間企業時代に原子力の設計を担当していた経験から、「国会の中でも日本のエネルギーを考えるアプローチを考えていきたい」などと所見を述べたほか、津村啓介・前内閣府大臣政務官(科学技術政策など担当、同)が懇親会で挨拶し、参加者と懇談した。


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