「胸を張って原子力」 J−PARCで原子力科学を融合

(1面から続く)

―そうした思いのうえで、結≠フ村政で「世界の原子力センター構想」を目玉に据えた狙い、きっかけを聞きたい。

村上 東海村はこれまで原子力の研究開発を先導してきたが、それはエネルギー利用を中心とした20世紀型の「日本の原子力センター」だった。これからは、原子力科学と原子力エネルギーが調和したまちづくりで21世紀型の「世界の原子力センター」を目指していく。その要点の第1は、地域主権に基づくわれわれ自身の自覚と責任で原子力を考えていくこと。第2は、東海村の持っている歴史と文化・村民の叡智、および新しく入って来た原子力科学を総合的に融合、その結果として10年後にとどまらず100年後も見据えた真に豊かで持続可能な社会≠確立、世界に貢献したい。その狙いは、東海村のこれまでの蓄積・叡智を全開し「今と未来を生きるすべての命あるもののためにこの計画をつくっていく」という思いきり高邁な視点に立つことにある。それぐらいの気概、志を持たなければ、世界に貢献するとか、これから21世紀のグローバルパートナーシップのイニシアチブは執れない。

こうした新構想の起点は、これまでのエネルギー利用に加え平成20年度に世界最先端の共同研究施設「大強度陽子加速器(J‐PARC)」の供用が開始されたことにあった。J‐PARCは、今までの原子力の施設と違い直接的な経済的恩恵を地元に与えてくれるわけではない。しかし、さまざまな放射線(量子ビーム)を利用する原子力科学の宝庫だ。したがって、これに東海村が先導してきたエネルギー開発技術・実績、とりわけ今後の原子力国際展開にも不可欠となる安全運転、核不拡散、セキュリティー上の強みを融合させれば、卓越した人材、最先端施設さらにそれにふさわしい社会組織がそろっていることと合わせ、世界で比類ない原子力の総合センターとなる。この最終的な具体策は、昨年9月に開設した「東海村を原子力センターにする懇談会」(会長=田中俊一氏)で村民や関係機関等から意見を聞き調整、来年度からスタートする。

―同構想具体化の一環として欧州原子核研究機構(CERN)など欧州の代表的施設を見学したが、成果は。

村上 日本はこれまで先進技術を海外から取り入れることに熱心で、それを欧米諸国は受け入れてきたが、これから原子力では東アジアで日本が提供していかなければならない立場になる。欧州では、特に最先端の量子科学分野で彼らがどういうスタンスで臨んでいるのか、ほんの短い期間の訪問だったが明確に理解でき、「これこそが国際都市だ」との思いを抱き帰国した。われわれは自分たちの成長のためだけの考えから海外を見て、協力とか友好を重んじ国際貢献するという視点が著しく欠けていたように思う。それでは「国際的研究開発の拠点」を標榜しても失望されるのではないかと反省させられた。

私はこれまで、早くから東海村の原子力研究開発・教育機能を高める見地から、東京大学の専門職大学院、茨城大学の量子研究大学院や高エネルギー加速器研究機構等を誘致、大学と一体となって着々と基盤強化に努めてきた。また東海村がビルのワンフロアを県から借り切って「研究交流プラザ」をオープンし、現在は海外からの研究者たちの交流の場になっているが、将来は東海村の村民との交流の場にもしたい。いずれにしても、東海村が21世紀型の新たな原子力センターとしてのハブ機能を整えて世界に発信、国際貢献の一翼を担っていきたい。


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