【胸を張って原子力】 科学とエネルギーの村 = 六ヶ所

(1面から続く)

一方、現在の原子力政策大綱が閣議決定される直前の平成14〜15年ごろは国の原子力政策も一貫性を欠き、さまざまな憶測も乱れ飛んだことで、六ヶ所村民の不安も増幅された。大綱策定から5年を経過、原子力エネルギー産業もグローバル時代に突入したので、この変革部分は大いに議論を尽くしより確かなものにしていくべきだと思うが、何よりもまず原子燃料サイクルの堅持・推進という基本路線をしっかり再確認してほしい。特に原子力の国際展開・パッケージ輸出に日本政府として本腰を入れる以上、まず原子力政策の基本はぶれない≠アとを国内外に明確に示し、実践する責務があり、政策大綱の役割ではないか。

―原子燃料サイクル施設が集中する地域的特性を生かした新産業創出・人材育成の取り組み、および将来展望を聞きたい。

古川 たとえば、青森県内企業の原子力関連産業への参入促進策として毎年、「原子力メンテナンスマッチングフェア」を開催、第1回会場は六ヶ所村で、昨年の第5回はむつ市だった。また、これと並行して六ヶ所村では、産業育成協議会等を設置し、村内企業の技術力の向上や人材育成策として各種の資格取得を支援、できればその部分で小規模でも新産業の創出にもつなげていきたい。ただ、今はまだ肝心の再処理工場が本格操業前なので、保守・点検以外の関連業務もストップしたままでは新産業創出の具体的な展望が開けない。この影響はいろいろな分野に及び、村の財政計画や長期事業計画を見直す必要も生じ、心理的影響も大きいので、操業時期を2年後といわず1年半ぐらいに前倒しできるよう期待したい。

また、大学等と連携しながら、新産業創出と人材育成はセットになる。昨年5月には東北大学が「サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター六ヶ所分室」を開設した。これは八戸工業大学等と連携しながら、放射性同位元素(RI)の高度利用研究開発を行うもので、こうした開発研究は「新原子力利用」と呼ばれ、この研究成果は将来、地域産業の振興・雇用創出につながると期待されている。

このように、六ヶ所村には再処理工場のほかにも、ウラン濃縮工場、MOX燃料加工工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、環境科学技術研究所、さらには国際核融合エネルギー研究センターまで含め原子力関連の最先端施設が立地、また原子力以外では、むつ小川原国家石油備蓄基地、世界初の蓄電池併設型風力発電など、多彩かつ多数のエネルギー関連施設・事業の拠点になっている。したがって、これらを融合して新産業の創出や人材開発・育成につなげ、技術だけでなく21世紀の新たなエネルギー文化をここで生み出し、世界に発信していくことを夢に思い描いている。

その表看板として「科学とエネルギーの村=六ヶ所」を掲げ、村全体を経済産業省資源エネルギー庁が推進する「次世代エネルギーパーク」として捉え、多くの人が見て触れる機会を増やし、次世代エネルギーのあり方について理解を深める新事業もスタートした。その主柱が原子燃料サイクル事業であり、ここでは、将来必ず必要になる高レベル放射性廃棄物の減容化、放射能半減期の短縮、熱利用に加えて白金族などレアメタルの回収にもつながる新技術開発にも貢献したい。

さらに核融合研究でも魅力ある成果を挙げ、われわれの四半世紀の苦難が歴史的にも評価され、胸を張れるような基幹産業に発展させたい。


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