「クリーン・エネで電力の8割を」 米オバマ大統領の一般教書演説

米国のB.オバマ大統領(=写真)は1月25日、今後1年間の施政方針を示す一般教書演説の中で、「2035年までに原子力を含めたクリーン・エネルギーで米国の電力需要の8割を賄う」との目標を掲げた。昨年11月の中間選挙大敗で議会が「ねじれ」状態となるなか、雇用促進に結びつく技術革新の一環として原子力の推進を超党派で進める覚悟を示したものとして歓迎する意見がある一方、原子力をクリーン・エネルギーとして扱うべきでないと批判する声も環境保護団体を中心に上がっている。

オバマ大統領は昨年1月の一般教書演説と翌月の予算教書演説で、クリーンな新世代原子炉の建設を通じた雇用創出促進や原子炉建設に対する融資保証枠の3倍増を訴えるなど、大胆な原子力支持政策を表明。それに比べて今回の演説では原子力発電の扱いは格段に縮小した。

同大統領はまず、「米国が将来を勝ち取る第一歩は技術革新の奨励だ」と述べ、今後、投資に力を入れるべき分野として(1)生物医学研究(2)情報技術(3)クリーン・エネルギー技術を挙げた。中でも、クリーン・エネルギー技術への投資は「ブレイクスルーにより雇用創出につながる」と強調し、2035年までに全米の電力の80%をクリーン・エネルギー源で供給するという新たな目標設定に挑むよう国民に対して要請。「ある人たちは風力と太陽光を求め、またある人々は原子力やクリーンな石炭、天然ガスを欲するだろう」と述べるなど、原子力を改めて再生可能エネルギーと同等に位置付けるとともに、「民主・共和両党が協力してこの目標を実現するよう」呼びかけた。

米国原子力エネルギー協会(NEI)は、大統領がこのような包括的なクリーン・エネルギー政策を打ち出した点を「心強い発言だ」と評価。大統領の原子力に対する継続的な支持見解が超党派体制での原子力支援という方針の促進に結びついたと指摘した。その上で、「原子力の国内市場のみならず急速に成長する世界市場への輸出においても、米国が先進的な原子力技術開発でリーダー的立場を維持するという戦略の重要性を政策課題として適切に際立たせた」と分析している。

NEIはまた、大統領とボエナー下院議長、そして議会の共和・民主両陣営が原子力を潜在的な協力分野に特定したと指摘。これこそ、米国が直面する重要なエネルギー問題をクリアするための要になるだろうとの見解を示している。


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