〈胸を張って原子力〉 立地地域主導の新息吹(5)経産省 資源エネルギー庁長官 細野 哲弘氏に聞く “世界標準”主導「内外一体の原子力政策」を展開

―菅直人首相は今国会における施政方針演説で、国づくりの第一の理念として「平成の開国」を掲げ、この開国を成長と雇用につなげるため新成長戦略を着実に実施する方針を表明した。このうちパッケージ型海外展開は各閣僚による働きかけで前進しており、中でも自らベトナム首相に働きかけた結果、原子力発電施設の海外進出が初めて実現することに言及した。経済産業省として、国家戦略としての原子力の位置づけ・認識を聞きたい。

細野 原子力発電はエネルギー安定供給と地球温暖化問題を同時解決するために不可欠であり、安全確保を大前提に引き続き積極的に推進していく。昨年6月に閣議決定した「新成長戦略」や「エネルギー基本計画」においても、原子力を重要な柱と位置づけている。

わが国原子力産業の海外展開は、わが国の経済成長への貢献に加えて、世界のエネルギー安定供給や地球温暖化対策への貢献という意味で重要である。

世界の原子力発電所の設備容量は2030年までに現在の約2倍に拡大するとの予測もあり、経済成長が著しい東南アジアや中東諸国などで原子力発電所の新増設計画が相次いでいる。こうした外需を取り込むことができれば、わが国の経済成長の強力な牽引役となることが期待される。

日本は、世界的に原子力が停滞した1980年代後半から数年前までの、いわゆる「原子力冬の時代」にも原子力発電を着実に建設・運用してきた結果、今や世界の原子力産業における中心的プレーヤーになった。途上国のみならず先進国からも大きな期待が寄せられており、こうした世界の期待に応えていけるよう、政府としても積極的に支援したい。

また、国際展開と同時に国内の原子力発電も積極的に推進する。「エネルギー基本計画」では、電源構成に占めるゼロ・エミッション電源比率を、30年までに約70%に高めることを目標としており、これを実現するには、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大に加え、原子力が全電源の約50%と最大の役割を果たすことが期待されている。このため、30年までに、少なくとも14基以上の原子力発電所の新増設・リプレースに加え、設備利用率約90%とする目標実現に向けて、引き続き積極的に取り組んでいく。

―ベトナム・ニントゥアン省の第2期原子力発電所建設プロジェクトにおける成果をどう評価し、今後の国際展開をどのように進めていくのか。

細野 昨年10月の日越首脳会談で、ベトナム原子力発電所第二サイトの建設に関し、日本をパートナーとすることが合意されたが、これは、長年培ってきた二国間の地道な協力関係や、総理をはじめ官民各層での働きかけが功を奏したものである。今回の合意は、半世紀にわたる原子力発電の実績と世界最高水準の技術を持つわが国の原子力産業が、世界で活躍していくための歴史的な第一歩である。東南アジアや中東等の新規導入国は、将来的に発展の可能性が大きく、すでにトルコ、ヨルダンなどが原子力発電所の具体的な導入計画を発表している。

こうした新規導入国市場については、「システム輸出」として、原子力発電プラントの建設、運転・保守管理、燃料供給、さらには人材育成や安全確保等のための制度整備までを含めた一体的な対応が必須となる。このため、民間企業とも連携しつつ、人材面や制度面での協力、原子力協力協定の締結の促進とともに、ハイレベルを含む官民一体の働きかけを引き続き積極的に行っていきたい。   (2面に続く)


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