米エネルギー省の2012年度予算要求 融資保証3倍増盛り込む

米エネルギー省(DOE)のS.チュー長官は14日、今年の10月から始まる2012会計年度のDOE予算要求額を公表した。新規原子炉建設計画に対する政府融資保証に360億ドルの追加要求額を盛り込むなど、B.オバマ大統領が一般教書演説で掲げた「2035年までに原子力を含めたクリーン・エネルギーで米国の電力需要の8割を賄う」という目標達成に向け、具体的な予算充当しているのが大きな特徴。この増額により、DOEでは9〜13基の新規原子炉建設が実現するとの見方を示している。また、小型モジュール炉の開発に新たに9700万ドルを計上している。

DOE全体の予算要求額は2010会計年度予算から11.7%増の295億ドルとなった。(2011会計年度の一括歳出予算法案は現時点で議会の承認が得られておらず、2010年予算と同レベルの暫定歳出予算の下で活動。)クリーン・エネルギーや国家の核安全保障および技術革新を優先分野と位置付け、米国が科学技術研究で最先端の立場を維持すると共に、原油依存を軽減するクリーン・エネルギー経済の牽引役となることを強く意識したものになっている。

〈融資保証枠の合計は545億ドルに〉

そのための重要な電源である民生用原子力発電所建設に対して、DOEは再生可能エネルギーなどすべての融資保証対象技術の中でも唯1,360億ドルを追加した。この増額分で、DOEでは6〜8基の建設計画を支援できると計算しており、これに既存の保証枠である185億ドルを加えれば合計保証枠は545億ドルとなり、新たに建設可能になる原子炉の総数は9〜13基に増加するとしている。

この545億ドルという融資保証限度額は、オバマ大統領が1年前に2011会計年度の予算教書で議会に提案したのとまったく同額。2年連続で保証枠の3倍増が要求されたことについて、米原子力エネルギー協会(NEI)では「オバマ政権が原子力を技術が実証済みで信頼性が高く、炭素を出さない電源と認識している証拠だ」として歓迎。新たな原子炉建設を加速する起爆剤になるだろうとコメントした。

また、DOE予算のうち原子力関係予算は2010会計年度予算から1%減の8億5300万ドルとなったが、ここでは小型モジュール炉(SMR)用予算として新たに9700万ドルの枠を創設。このうち6700万ドルがSMR2基の商業化に当てられるほか、3000万ドルが原子炉概念研究開発実証プログラムの下で支給されるとしている。

〈処分場は予算ゼロ〉

 

一方、ユッカマウンテンの廃棄物最終処分場計画の打ち切りにより、民生用放射性廃棄物管理用の予算枠は削除された。この関連で、同計画の安全審査を実施していた米原子力規制委員会(NRC)も同関係費を予算要求額から削っており、2010会計年度予算から2870万ドル減の10億4000万ドルとなった。

なお、NRCの要求では、既存炉の許認可経費を約2000万ドル減額しているのに対し、2基の新規原子炉および後続原子炉の許認可と建設に要する経費として1250万ドルを追加で計上。使用済み燃料の管理と輸送に関する経費も830万ドルの上乗せとなっている。


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