原子力機構がHTTRで 世界初の炉心冷却喪失試験に成功 自然に原子炉出力が低下 固有の安全性を確認

日本原子力研究開発機構はこのほど、原子炉出力30%において冷却剤ヘリウムの流量をゼロにし、さらに2系統ある炉容器冷却設備のうち1系統を停止した、より厳しい「炉心冷却喪失試験」を行い、「自然に原子炉出力が低下し、炉が安定な状態になる」高温ガス炉としての固有安全性を確認した。12月に行った高温工学試験研究炉(HTTR・茨城県大洗町)での「炉心流量喪失試験」に続いて、1月より実施していたもの。

先般の「炉心流量喪失試験」は、炉出力約30%で全てのガス循環機を停止させて炉心における冷却材ヘリウムの流量をゼロとし、炉心の冷却能力を著しく低下させた場合の原子炉の安全性を実証することを目的としており、結果、自然に炉の出力は低下し、燃料温度の異常な上昇等もなく安定な状態になることを確認した。

今回の試験は、原子炉停止後の残留熱を除去するために原子炉圧力容器周りに設置される炉容器冷却設備も同時に停止させる世界初の「炉心冷却喪失試験」で、前回よりも厳しい条件となる。

高温ガス炉は、カザフスタン、米国などでも、効率的な設計の指標としても期待されており、原子力機構では今後も、実用高温ガス炉システムの経済性向上等をめざしていく。

HTTRは、2010年1月から3月にかけて50日高温(950℃)試験を実施。高温ガスを用いた水素製造システムの実現可能性などを世界で初めて実証し、設計の妥当性を確認している。2010〜14年度にかけては、限界性能試験や熱利用特性試験などを行う計画だ。

原子力機構は昨年10月、NGNP計画から初めてHTTRを利用した委託研究を受託している。この委託研究の1つとして、昨年3月に終了した50日間高温連続運転におけるトリチウム挙動評価に係る委託研究を米国ゼネラルアトミックス(GA)社経由で受託。HTTRのトリチウム濃度データからトリチウム挙動を評価し、得られた知見をNGNP計画へ提供することなども行っている。


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