スペイン、脱原子力政策を緩和 運転期間の上限を撤廃

スペイン議会下院は15日、政府が提案していた持続可能経済法案を賛成多数で可決し、原子力発電所の運転期間を最大40年に制限していた規定を削除した。同法案のエネルギー計画に関する第79条を334対10の圧倒的多数により修正したもので、国内で稼働中の原子炉8基の運転期間は今後、政府が原子力規制当局等の助言の下、様々な条件を勘案して決定していくことになった。欧州原子力産業会議(FORATOM)では「欧州のその他の国の動きに同調し、スペインでも正式な脱原子力政策から離れ、わずかだが重要な政策転換が起こりつつあることを裏付けている」として高く評価している。

TMIおよびチェルノブイリの両事故により縮小したスペインの原子力発電開発では、2004年以降、政権を維持しているJ.サパテーロ社会労働党(PSOE)の明確な脱原子力政策によって新規原子炉の建設が禁止されている。

しかし、再生可能エネルギー源による温室効果ガス排出抑制が大きな成果を生まない中、原子炉の運転期間延長は重要との認識は同国の政治的合意事項となりつつある。09年7月、現政権は1971年に運開したサンタマリア・デガローニャ原子力発電所に4年間の運転期間延長を承認、同炉はスペインで初めて、40年以上の運転を許された炉となった。また、その他の原子炉についても、安全性に問題がなければ延長を認めるとの意向を関係閣僚が表明していた。

今回可決された運転期限撤廃のための修正勧告案は、与党PSOEのほか最大野党の国民党(PP)、カタルニャの中道右派政党(CiU)およびバスク民族主義党(PNV)が超党派で支援。案文では「今後のスペインのエネルギー構成要素の中で原子力の占める割合は、既存炉の操業年数や再生可能エネルギーの状況などに応じて決定する」と明記されていた。

またその際、原子力安全委員会(CSN)の安全や放射線防護に関する決定のほかに、需要動向、新技術の開発状況、電力供給保証、発電コスト、温室効果ガスの排出量、および欧州で現在規定されている基準枠組みも含めたすべての要求項目を考慮するとしている。

なお、CSNは17日、コフレンテス原子力発電所(BWR、109.2万kW)の運転認可を期限切れの今年3月以降、21年まで10年間の延長を申請する報告書を全会一致で承認。現政権の今後の対応が注目されている。


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