学会・特別委 小学校教科を調査 原子力「公平な記述」

日本原子力学会の原子力教育・研究特別専門委員会(主査=工藤和彦・九州大学高等教育開発推進センター)は2月24日、11年度より実施される新学習指導要領に基づく小学校教科書のエネルギー・原子力関連の記述に関する調査報告を発表した。

今回の調査では、11年度からの使用に向け検定を受けた国語、社会、理科の小学校教科書全113点について、エネルギー関連の記述のあるものを抽出し、その記載内容を評価、コメントを示している。記述のあるものの割合は、原子力関連に絞ると、国語2%、社会14%、理科11%で、計8点だった。

社会の教科書で原子力を取り上げている4点はいずれも、各発電方式について、その原理を簡単に説明し理解し易い記述となっているものの、一部に、ハイブリッド自動車の温暖化対策に対する過大評価など、不適切な内容もあった。

原子力発電に関するものでは、「ウラン燃料を利用して発生させた熱で発電する。少ない燃料で多くの電気を生み出せる。燃料の再利用にも取り組んでいる。燃料を輸入に頼っている。発電のとき二酸化炭素を出さない。燃料やはいき物のあつかいがむずかしく、安全のための十分なそなえが必要」(東京書籍、3、4年)、「少ない燃料で大きな電力の得られる原子力は、温だん化の原因とされるガスを出さないことから、見直されてきています。ただ、放しゃ能や、地しんが起きたときなどの安全面から、人びとの間には不安もあります」(日本文教出版、3、4年)があり、今回の調査報告では、「客観的」などと評価している。

理科の教科書で原子力を取り上げている3点ではいずれも、「電気を作る手段」として、原子力について、火力、水力等の記述と比較して、「客観的、公平に取り扱っている」としているほか、原子力があまり取り上げられないのは、学習指導要領で、発電方式までは記述を要求していないからでは、と推測している。

また、全体として、地球温暖化問題に関する内容では、動物を題材にセンチメンタリズムに帰したり、科学的かつ冷静な視点に欠ける教科書も多く、比較評価の公平・公正性が懸念される記述もあるとも指摘している。

同特別委では12年度以降に施行される中学校、高等学校の新教科書についても、調査する。


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