福島第一1〜4号機の被害甚大 巨大津波で非常用ディーゼルが機能喪失 被害拡大防止に全力

11日午後に発生した世界最大級の海底地震「東北地方太平洋沖地震」(M9.0)の影響で、外部電源、内部の非常用電源ともに失われた東京電力・福島第一原子力発電所で甚大な事故が発生している。地震発生時に運転中だった1号機、2号機、3号機で水素爆発による原子炉建屋や格納容器下部の圧力抑制室の破損などが発生した。現在も非常事態として、消防ポンプ車を使って原子炉圧力容器内にホウ素を含む海水を注入し、燃料の冷却を懸命に行って事態の沈静化を図っている。定期検査中だった4号機の原子炉建屋でも2回にわたり火災が発生した。正門前で最大約12ミリシーベルト(mSv)/時のガンマ線が検出され、3号機付近では15日午前、400mSv/時の高い放射線を記録した。政府は、同発電所から半径20キロメートル内、福島第二原子力発電所から半径10キロメートル内に範囲を拡大して、住民に避難を指示勧告した。東京電力の一都八県の電力供給管内では、約1000万kW程度の電力供給不足が見込まれており、同社では被災した原子力発電所の事故拡大防止に全力を傾注する一方で、電力消費の節約を企業などだけでなく、市民1人1人にも訴えかけている。(2〜4面に関連記事)

地震時に運転中だった東京電力・福島第一原子力発電所、同・福島第二原子力発電所、東北電力・女川原子力発電所、日本原電・東海第二原子力発電所の計11基の原子炉は地震発生直後に、制御棒が挿入され、すべて自動停止した。

そのうち外部電源が確保できなくなった福島第一では14基ある非常用ディーゼル発電機はすべて自動起動したものの、その後、15時20分ごろに想定(5メートル)を大きく超える津波がサイトを襲ったことにより同42分に電源喪失、これにより運転中だった1号機(46万kW)、2号機(78万4000kW)、3号機(同)の交流電源もすべて失われた。この時点で原子力災害対策特別措置法第10条の規定に基づく特定事象発生の通報がなされた。同45分にはオイルタンクが津波により流出してしまった。

その後は、1号機は非常用復水器で原子炉内の蒸気を冷やし、2号機、3号機は原子炉隔離時冷却系(RCIC)で原子炉に注水していた。いずれも非常用直流電源のバッテリーで制御している。RCICは崩壊熱による自己蒸気を利用してポンプを回し、格納容器内に貯めてある水を炉内に供給するシステム。

この非常用直流電源にたよって炉内冷却を行っている間、外部から電源車両を集め、内部母線に接続しようとしたがうまくいかず、非常用バッテリーは設計8時間を大幅に超えて電気を供給し続けたが、次第にダウン。

政府は11日16時36分には1、2号機が非常用炉心冷却装置による注水不能に陥り、注水状況が分からないため、念のため同法15条に該当すると判断、「原子力緊急事態宣言」を発した。

東京電力では非常用バッテリーの機能喪失に備えて、同21時にはディーゼル駆動の消火ポンプを起動し、炉圧が低下したら注入できる体制を取った。

東京電力・福島第一原子力発電所の緊急対策室は、炉心の冷却不足で同21時40分ごろには炉内水が燃料頂部まで低下し、同22時20分ごろには炉心損傷が開始するとの見通しを示し、まず福島県が同20時50分に同発電所1号機から半径2キロメートル以内の住民(1864人)に避難を指示。同21時23分には菅直人首相が、同1号機から半径3キロメートル圏内の住民の避難と、半径3キロメートル〜同10キロメートルの住民の屋内待避を指示した。

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日にちが変って12日午前零時30分現在、1〜3号機まで燃料は十分に炉水内にあったものの、1号機の格納容器上部(運転中はチッ素充填)の圧力が上昇、圧力を下げ格納容器の破損を避けるために、放出弁を解放し、格納容器下部の圧力抑制室に通した後、高さ120mの排気筒から微量の放射能を含む気体を放出することにした。

その後、3機とも冷却水不足のため、炉心燃料が炉水から露出し始め、最終的には消防ポンプ車でホウ素を加えた海水を炉内に断続的に注入。

1〜3号機の水素爆発による損傷のほか、15日午前には定期検査中だった4号機の原子炉建屋でも、使用済み燃料プールの冷却が不十分になって水素爆発が発生し、建屋上部が損傷した。

17日午前には自衛隊ヘリコプターで、上空から海水を3、4号機に注入し始めた。


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