福島原発事故を巡る各国の反応 避難態勢、国民性は評価

海外のメディアは11日の日本の東北地方・太平洋沖地震について、発生直後より連日トップニュースとして注目している。当初は災害の中でも秩序を乱さない日本を称賛する向きが多かったが、原子力報道については疑念を持つ論調が増えてきた。

米国では、ニューヨーク・タイムズ紙が11日付で「日本の厳しい建築基準が命を救った」とする記事を掲載したが、14日の同紙では「放射性物質を含む蒸気の放出は数か月続けなくてはならない可能性がある」とする日米専門家の意見を掲載した。

英国のフィナンシャル・タイムズ紙アジア版は15日付で、福島第一原発の事故がチェルノブイリ原発事故の再来となることを「最悪のシナリオ」としたが、一方で福島原発の強度および事故時の状況が違うとして同シナリオを否定的に見る国際的専門家らの意見を紹介した。

マンチェスター大学ダルトン原子力研究所のR.ウェイクフィールド教授は、福島原発のBWRの構造が格納容器を持たないチェルノブイリ発電所とは全く異なり、はるかに強固だと指摘。爆発時に発電中だったチェルノブイリ事故に対し福島の原発は自動停止していた点も違うとしている。

しかし、スウォンジー大学で危機管理を専門とするJ.ギタス氏は、福島第一原発2号機で燃料棒が溶融し、圧力容器と格納容器が破壊された場合は数十人規模の被ばく者が出る可能性が1%残っているとした。

またイスラエルでは、マーリブ紙が15日付で、テルアビブ大のウジ・エベン化学教授による「日本は事実を隠しており、公正で透明性のある情報開示を行うべき」とする意見を掲載した。

同氏は、福島第一原発1、3号機について原子炉が無傷だと報告されているが、長年使われた炉心には亀裂などが無数にあり疑わしいと主張。以前から日本の原子力産業界の幹部は情報を歪曲していると批判されてきたとして、今回も当局広報担当者は内容のない声明で当座をしのいでいるだけだと批判している。

ロシアの日刊経済紙であるベドモスチ紙は14日1面で「日本の教訓」として、東日本大震災における日本政府の対応と国民の団結力を高く評価。他国で同様の災害が起きればはるかに被害は甚大であっただろうと強調する社説を掲載した。これほどの地震にもかかわらず、送電網や交通網は崩壊せず、住民への支援や避難が的確に行われており、パニックになっていないと伝えた。その理由として、建造物や交通の技術向上の継続、避難訓練を随時行っていることなどを「国民的特質」として挙げた。さらに福島第一原発の状況に関する日本政府による情報の公開性についても称賛している。

〈各国がモニタリング〉

ロシア気象庁当局者は15日、日本時間の同日午後5時現在、ロシア極東全域の放射線測定において、わずかな上昇はあったものの異常値は出ていないと発表した。同国は、福島第一発電所事故を受け、放射線測定を強化している。

また韓国原子力安全技術院は15日午後6時現在、同国東方の日本海・鬱陵島に設置されているモニタリング装置の測定値に異常はないと発表。ほかに全国70か所のモニタリング装置などの数値を24時間体制で確認している。

さらに韓国気象庁は同日、福島第一原子力発電所から放出された放射性物質が拡散した場合を想定したシミュレーション結果を発表した。

放射性物質の大部分は日本東方の太平洋に移動し、陸地に向かう量はそれほど多くないとしている。ただし放出された放射性物質の量や時間、事故状況に関する具体的なデータはないため「あくまでも仮定」としている。

〈日本産食料品を検査〉

中国の東方早報は15日、上海市の検疫が日本から輸入される米などの食料品に対する放射線量測定を開始する方針を固めたと報道した。

韓国食品医薬品安全庁は14日、日本から輸入される生鮮食料品について放射能検査を行う方針を明らかにした。メロンやカボチャなどの日本産の食品についてセシウム137などの値を確認する。

シンガポール農畜産物管理庁は14日、日本の生鮮品について点検を行う意向を表明。事態の推移により、追加措置の必要性について判断する。

フィリピンでも14日、科学技術省や保健省、原子力研究所(PNRI)などを集めた協議を開催。日本からの輸入食品や食材に対し、念のためPNRIが放射能検査を実施するとした。


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