【原子力ワンポイント】広く利用されている放射線(12)自然放射線より活性酸素で細胞は傷つく

酸素を怖がる人は少ないと思います。しかしこの酸素から生まれる活性酸素は、DNAを傷つけてがんなどを引き起こす原因となります。傷つける度合いは自然放射線より何百倍も大きいのです。

(12) 活性酸素と放射線

ゆりちゃん 酸素は人にとって大切なものと思っていましたが、毒にもなるのですか?

タクさん 人は約60兆個の細胞からできています。それぞれの細胞に取り込まれた酸素は、栄養分を分解して人が生きていくためのエネルギーをつくり出し、水(HO)に変わります。しかし、水になれなかった、余った酸素(活性酸素)は遺伝情報を担う物質であるDNA(デオキシリボ核酸)を傷つけることがあります。この傷ついたDNAを元通りに直すことができないと、がんの原因になることがあります。

ゆりちゃん 「がん」はどのように起きるのですか?

タクさん DNAは、線路のように、2本の鎖(レール)に遺伝情報を伝える4種類の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が規則正しく並べられた二重らせん構造になっています。DNAにできた傷は3種類(塩基損傷、一本鎖切断、二本鎖切断)に分けられます。このうち2本の鎖がともに切れた「二本鎖切断」の傷は遺伝子の突然変異を起こしやすく、最もがんになりやすいことが知られています。

ゆりちゃん 二本鎖切断は活性酸素と放射線では、どちらが起こりやすいですか?

タクさん 余った酸素が傷つける二本鎖切断の数は、1日に細胞1個について約0.1個あります。これに対して自然放射線(2ミリシーベルト/年のレベル)が傷つける二本鎖切断の数は、1日に細胞1個について約0.0002個です。日常のレベルで見ると、自然放射線よりも酸素で傷つけられるものの方が、約500倍も多いことがわかります。(原産協会・政策推進部


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