独メルケル首相 エネ政策巡り 倫理委で議論を開始

ドイツのA.メルケル首相(=写真)は4日、「エネルギー供給のための倫理委員会」の初会合をベルリンで開催した。原子力から再生可能エネルギー時代へ転換するのに際し、地球温暖化や不足する電力の輸入など、矛盾の生じる可能性がある部分について議論の必要性があるとの考えから、同委員会で今後のエネルギー供給をめぐる広範な議論を開始。社会全体のアクセプタンスを得るのが目的だ。

 

同委の委員はさまざまな分野の団体や経済界、宗教界、学会などから構成されるほか、初会合にはメルケル首相やN.レトゲン環境相、R.ブリューデレ経済相も出席。原子力安全委員会が5月中旬に原子力発電所の安全性について技術的側面から検証結果を出した後、5月末までに原子力のリスクと社会がどのように付き合って行くべきかを決定する。

ドイツでは3月27日に州議会選挙が行われ、長年保守勢力が実権を握ってきたバーデン・ビュルテンベルク(BW)州で与党キリスト教民主同盟が大敗。緑の党が躍進したほか、ラインラント・プファルツ州でも緑の党と社会民主党の連立政権への参加が決まった。

福島第一原発事故直後の地方選挙ということで、フィリップスブルク発電所やミュルハイム・ケールリヒ発電所などの原発が立地する両州では、原子力は選挙戦最大の争点。メルケル首相もBW州のS.マップス州首相も、同事故が選挙の主たる敗因と認め、選挙結果をドイツ国民全体の意志の表れと受け止める考えだ。メルケル首相は「日本での事象によって原子力の平和利用に関する自分の見方は変わった」と明言している。

しかし同首相は、原発では安全確保が最優先ではあるものの、電力の供給安定性や低廉さも今後のエネルギー政策の中で一定の役割を果たさなければならない重要なテーマだと強調。倫理委員会などの議論を元に、これまでとは違ったバランスの取り方で、最善のエネルギー計画を策定するとしている。


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