原子力損害賠償審査会が始動 7月目途に指針策定へ

福島の原子力災害に伴う損害範囲等の判定指針策定および和解の仲介を行う「原子力損害賠償審査会」(会長=能見善久・学習院大学法学部教授)が15日、始動した。文科省に設置された。

原子炉運転等により生じた原子力損害は、一義的には事業者が負うが、今回事故は天災に起因するため、政府補償契約に基づく賠償措置(1事業所当たり1200億円)が適用されることとなる。一方で、事態は未だ収束しておらず、今後、膨大な数の請求、現場の混乱も予想されることから、損害賠償に関する紛争の自主的な解決を促進すべく、同審査会では早い段階で、住民避難に関する損害範囲の考え方(1次指針)として示した後、被害状況の調査、関係者からのヒアリングを行い、7月頃の指針策定を目指すこととした。

初回会合に際し、木義明文科相は、「一刻も早く被害者に適切な救援を」などと述べ、審査会の役割に期待した。また原子力安全・保安院が福島第一・第二原子力発電所の状況と見通しを説明し、農林水産省、中小企業庁、国土交通省、厚生労働省などが、原子力災害に伴う被害状況について報告した。

農水省によると、放射性物質の飛散、発電所周辺地域での放射線量の増大、土壌や農作物の汚染の結果、避難・屋内退避、出荷制限、作付制限の指示が行われ、農林水産業では、営農・飼養や漁業の操業停止、収入減少、風評被害、関連産業への波及的影響が発生、特に、避難指示・屋内退避区域では、米で約1万5000戸・1万6000ha、野菜で約3400戸・900ha、葉タバコで約1200戸・900ha、牛で約600戸・1万4000頭相当の営農が途絶し、給餌できない家畜の餓死も発生している。また、出荷制限が指示された福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県での制限品目の産出額は、年間671億円、農家数は延べ8万4000戸に上っている。さらに制限品目でないにもかかわらず価格下落や取引忌避に陥る風評被害、放射性汚染水放出による漁業の操業自粛、売れ残り廃棄処分に伴う費用、諸外国の輸入規制なども挙げられた。

審議では、風評被害をどこまで補償に含めるかなどが議論となり、能見会長は、風評被害や健康被害の範囲に関する最終的な指針と、早急に示すべき指針との2つの問題があることを指摘するなどした。


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