潘基文・国連事務総長 安全強化の具体策を勧告

国連の潘基文事務総長は19日、福島第一原発事故の影響を国連の全組織を挙げて調査するなど、原子力の今後の安全性強化のために具体的かつ実用的なステップ5項目を世界に呼びかけた。ウクライナのV.ヤヌコビッチ大統領の主導で開催された「安全で革新的な原子力エネルギーの利用に関するキエフ・サミット」の席で明らかにしたもの。25年前に同国で起きたチェルノブイリ事故を振り返るとともに、福島第一原発事故発生を契機に、最大限の安全性と平和利用を同時に保証するにはどうしたらいいか、世界全体がこの基本的な問題を再考すべき時が来ていると訴えた。

同事務総長はまず、2つの事故が残した教訓は様々に異なっても、住民の健康と環境への直接的な脅威となり、経済破壊を引き起こしたほか、農産物の取引にも被害を与えるなど、どちらも憂慮すべき課題と恐怖を提起したと指摘。原子力ではこうした影響が国境を越えるという性質上、将来的に安全性を強化していくには次の5点が必要だと提唱した。

(1)国レベル、国際レベルで安全基準の徹底的なレビューを行い、各国が事故の教訓を勘案して可能な限り厳しい基準が適用されるよう対策を取る。

(2)安全問題における国際原子力機関(IAEA)への支援を強化する。この意味で、福島事故の早急な収束をIAEAの天野事務局長に改めて要請したい。

(3)地球温暖化が極端な気象状況を引き起こすという観点から、天災と原子力安全の新たな結びつきを一層重要視していく必要がある。原子力発電所は地震や津波、火事や洪水などの全てに耐えねばならない。

(4)原子力の費用対効果分析を改めて実施しなくてはならない。核不拡散体制下で原子力を平和利用する権利が守られるよう、国連は福島事故の影響を全機関体制で調査する考えだ。

(5)原子力発電所の安全性とセキュリティは明らかに異なる問題だが、一方を促進すればもう片方も増強されるため、これらの結びつきを一層強める必要がある。

潘事務総長はこれらのステップこそ、21世紀のエネルギー問題に一層周到に取り組む方法だと強調。チェルノブイリと福島の悲劇が過去の物となるよう力を合わせようと締めくくった。


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