原子力損害賠償 避難、出荷制限などで一次指針

福島の原子力災害に係わる「原子力損害賠償紛争審査会」(会長=能見善久・学習院大学法務研究科教授)は4月28日、損害範囲の判定に関する第一次指針を策定した。

同審査会は、原子力損害賠償法に基づき文部科学省に設置されたもの。

第一次指針ではまず、政府による指示に基づく行動等によって生じた一定範囲の損害について、基本的考え方を示している。具体的には、「政府による避難等の指示に係わる損害」として、「避難費用」、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」、「財産価値の喪失または減少等」、「検査費用(人)」、「検査費用(物)」、「生命・身体的損害」、「精神的損害」を、「政府による航行危険区域設定に係わる損害」として、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」を、「政府等による出荷制限指示等に係わる損害」として、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」を対象とした。

政府の避難指示に係わる損害については、住民が負担した移動費用、宿泊費などが賠償の対象となるが、体育館などに設定された緊急避難所への宿泊の場合は、実費負担が発生しなくても、ホテル・旅館より、不便な生活による精神的苦痛も大きいことが考えられることから、「精神的損害」とも兼ね合わせて検討していくこととなった。

農産物や水産物の出荷制限指示に係わる損害については、政府指示以外でも、原子力事故に伴い、地方自治体による出荷または操業の自粛要請のあった区域や品目も対象としており、減収分の他、商品の廃棄等によって生じた追加的費用などが、合理的範囲で賠償の対象となる。農林水産省によると、基準値を超える放射性物質が検出された後、直ちに自治体が出荷自粛を要請しているケースも多く、政府指示と同時・同等に扱うべきとしている。

なお、事故の復旧作業等に伴う放射線被ばく、政府指示解除後に発生した損害など、第一次指針で対象外となった損害項目・範囲や、原子力損害賠償制度以外の救済措置との相殺可否については今後、審査会で検討していくこととしている。


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