燃料プールに脆弱性 スイスの規制当局 初回の安全審査結果を公表

スイスの原子力安全検査局(ENSI)は5日、福島第一原発事故後に国内の4原子力発電所で実施した安全審査の最初の結果を公表した。その結果、緊急の危険性はないものの使用済み燃料貯蔵プールの防護機能に若干の脆弱性が認められることから、8月末までに改善対策を提示するよう各発電所に通達している。

福島では想定外の規模の天災が事故原因となったが、スイスではここ数年来、最新の科学的知見に照らし合わせてこうした災害によるリスクを評価。ENSIによると、福島に匹敵する規模の天災がスイスで起こる確率は極めて低く、国内原子炉の基本的な安全性に問題はないが、同事故の教訓はさらなる安全性改善に向けた重要な新情報を提供していると指摘した。

こうした背景からスイスでは今後、世界中の原子力発電所で国際原子力事象評価尺度(INES)レベル2以上の事故が起きた場合、ENSIが原因解明するとともに、国内発電所における類似事象の発生防止策を検討。そのための手順は3つのポイント――@緊急の危険性があるかA一時的に原子炉を停止すべきかB安全性改善対策を取る必要があるか――に基づき、3段階に分けて実施されるとしている。

また、地震と洪水が組み合わさった場合の対処法を中心に、福島事故後に国内4か所の原発で実施した安全審査では、ゲスゲンおよびライプシュタットの両発電所で、燃料プールの水位と水温モニターを緊急時用制御室にも設置する必要があると判明(表)。ベツナウ発電所では地震および洪水に対する燃料貯蔵建屋の耐久性が不十分だった。

また、ミューレベルクでは普段取水しているアーレ川以外に冷却水を代替供給する方法がなく、緊急時の燃料プール冷却機能が適切に防護されていないと指摘している。

ENSIはこれらへの詳細な対応策の提出を8月31日を締め切りとして各事業者に指示。そのほか、@発生頻度が1万年に1回という大規模な洪水にも対処可能であることを6月末までに実証A同様の発生頻度の地震についても、2012年3月末までに対応策を実証B同様の地震により近隣のダムが決壊した場合の対処法も12年3月末までに実証――するよう事業者に命じている。


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