インド首相、原子力開発で声明 新たな安全強化策公表

インドのM.シン首相は4月26日に今後の原子力発電開発に関する声明を発表し、新たに独立の立場の規制機関を創設することや国際原子力機関(IAEA)の安全審査チームを招聘することなど、一連の安全性強化対策を明らかにした。

仏国の欧州加圧水型炉(EPR)導入を計画しているジャイタプールで住民の大規模な反対運動により死者が出たことを重く受け止め、国民が十分に納得できる形で透明性のある原子力開発を慎重に進めていく考えだ。

この声明はシン首相のほか、ジャイタプールが所在するマハラシュトラ州の首相、環境森林相、原子力省(DAE)大臣、インド原子力発電公社(NPCIL)会長らを招集した会合の後に出されたもの。福島第一原発事故後、とみに高まっている原子炉の安全性に対する国民の不安やジャイタプール建設計画の現状、インドの原子力発電開発計画全体への影響などが話し合われた。

その中でマハラシュトラ州首相と原子力相は、ジャイタプール地元住民の不安に対処するため、州議会およびすべての政党を交えた協議を実施し、NPCILと州政府が事故時の十分な補償体系導入を進めていることを首相に報告。ジャイタプール電力パーク建設計画に対して昨年11月に環境森林省が発給した環境許可については、手続きの一部である35の規定条件で完全な透明性が保証されることをNPCIL会長が改めて明言した。

また、165万kWのEPR2基の建設は段階ごとに分けて進めることとし、2019年までに包括的な環境影響評価を実施することになる。

福島事故によるインドの原子力計画全体への影響については、シン首相が「安全確保こそ最優先事項であり、DAEやNPCILが国民との意思疎通を改善する必要がある」と強調。以上のような状況に鑑み、次の事項が決定したとしている。

@既存の原子力安全規制委員会(AERB)を内包した、独立の立場の規制当局を創設するため、政府が法案を次回の議会審議に提案する。

A福島事故後に政府が設置した6つの安全審査委員会による最初の審査結果を公表する。

B最高レベルの安全性が確保されるよう、最良の専門的知見を採用し、IAEAの運転安全調査団(OSART)を政府が招聘する。

Cジャイタプールでは1基毎に単独の安全系と操業システムを採用。

D国産・輸入に関わらず、すべての原子炉および技術は例外なく規制当局が規定した安全基準をクリアすることとし、完璧な透明性をもって開発計画を進めていく。

シン首相はインドのエネルギー需要が莫大かつ増加し続けている状況において、原子力が重要なエネルギー・オプションであることを改めて強調。その安全性と住民の生活とセキュリティに十分配慮しながら推進すると繰り返し述べ、安全で確実かつ経済的な原子力発電をインドが変わらず進めていくことを明言した。


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