米規制委 国内事業者に 電源喪失対応で情報要請

米原子力規制委員会(NRC)は11日、原子力発電所における緊急時の影響緩和戦略に関する文書を全米の原子力発電事業者宛てに発出し、深刻な事象発生後の全交流電源喪失への対応手順について情報を提供するよう要請した。

福島原発事故の発生経緯を重く見、各発電所が従来から策定している過酷事故の収拾対応手順のみならず、要員の能力の確保や機器の維持管理が現実的であるか、NRCとして審査する必要性を認めた措置といえる。

米国では70年代後半から、原発における全交流電源喪失のリスクが対応を要する重要課題として浮上。80年代後半にNRCが公布した規則により、各原子力発電所では全交流電源喪失への対応が求められることになった。また、2001年の9・11テロ事件を受けてNRCは翌年、緊急時対応に関する指令を発出。その中の「B5b条項」で緊急時の影響緩和措置についても規定していた。

今回の措置はこのB5b戦略に基づくもので、NRCは通常の安全システムが損傷を受け、利用不能になった場合でも、炉心と使用済み燃料プールが確実に冷却されるよう、規制項目の遵守状況について事業者に包括的な確証を要請。このほか福島事故に鑑み、(1)追加の評価プログラムが必要であるか(2)現行の検査プログラム強化の必要があるか(3)さらなる規制アクションが必要か――を確定するため、事業者から情報を求めたいと説明している。

事業者に対するNRCの具体的な要請は以下の通り。

(1)6月10日までに、事故収拾対応のための機器が設置され利用可能であることや、現有の要員体制でその収拾手順が実施可能かについて情報を提供する。

(2)7月11日までに、今回の確認要求事項――例えば、必要な資源がどのように維持され、十分な能力があることを確認しているか、発電所の設備状況が変更された場合に収拾戦略がどのように見直されるか、準備された体制がどのように現地の所外支援組織と連携し、関係が維持されるか――について具体的に文書に記述し、発電所長の確約と共に提出する。

なお、NRCは13日、全米104基の原子力発電所に常駐するNRC検査官達が提出した報告書−−深刻な事象後の電源喪失とサイトの大規模な損傷に対するそれぞれの発電所の対処能力について、公開を開始した。

NRCが13日を締め切りに提出を指示していたもので、E.リード原子炉規制室長は、「2、3の発電所で収拾手順や資源の維持で改善が必要なものの、ほとんどの発電所では通常の安全系が影響を受けた場合でも安全性が保たれるとの報告があった」としている。


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