ドイツ・メルケル政権の連立与党が合意 2022年までに既存炉全廃へ

福島事故を受けて脱原子力までの具体的な日程について審議していたドイツのA.メルケル政権は5月30日、遅くとも2022年までに国内の17基すべての原子炉を閉鎖することで与党が合意に達したと発表した。

昨年10月には既存炉の運転期間延長法案を成立させ、約10年間続いた脱原子力政策から転換の一歩を記した同政権だったが、延長法の執行を待たずに脱原子力への逆戻りが決定的となった。同政権は今後、この合意内容に基づく原子力法の修正を6日の閣議にかける予定だが、再生可能エネルギーや省エネで10年以内の脱原子力が実際に実現可能か、その他の原子力発電国にとっても展開が注目されている。

今回、連立与党は原子力安全委員会による国内原子炉の技術的な評価、および4月にメルケル首相が設置した「エネルギー供給のための倫理委員会」による勧告に基づいて脱原子力までの道筋を調整。同委の最終報告書を受けて、与党・3党が半日以上の協議の末、ようやく決定した。

それによると、福島事故直後に一時的に操業停止させていた古い7基、および改修工事のため2007年6月以降停止していたクリュンメル原子力発電所をこのまま永久閉鎖とするほか、1980年代以降に運開した原子炉のうち6基は2021年末までに閉鎖する。残ったネッカー2号機、イザール2号機(=下の写真)およびエムスラント原発の3基は電力が不足する事態に備えて22年まで稼働が可能となった。

ただし、2013年までは寒冷期に停電の恐れが出た場合に備えて、古い炉を1基、再稼働可能な状態にしておく。首相によるとこれは「抜け道」ではなく、連邦ネットワーク庁が原子力以外の対処法を模索するよう命じられている。また、原子炉の運転期間延長と引き替えに原子力事業者に課される予定の核燃料税は、そのまま温存される。

倫理委は報告書の中で、「この計画は途方もない挑戦だ」としながらも「10年以内の脱原子力達成は可能」と確信。エネルギー改革の進行状況をモニターさせるため、独立の議会コミッショナー事務局を速やかに設置することも勧告している。

新たなエネルギー・コンセプト

今回の合意に伴い、連邦政府は昨年9月に閣議決定していた「2050年までのエネルギー計画」の新たな1ページとして、「豊かで信頼性が高く環境にも優しいエネルギー供給への道筋」と題したエネルギー・コンセプトを公表した。

総発電電力量の27%を賄っていた原子炉の閉鎖分は、省エネとエネルギーの効率化、および水力や太陽光、風力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーで代替する考え。さし当たり2020年までにこれらの発電シェアを現在の17%から35%に倍増する計画を明記した。

それによると、直ちに実施する7基の閉鎖が国内のエネルギー供給に影響することはなく、ドイツでは近年、需要以上に発電した電力の輸出も実施。ピーク時においてさえ十分な供給能力が備わっており、脱原子力による電気料金の上昇はないとする専門家の見解を強調した。

政府はまた、再生可能エネルギー時代への移行を早めるため、独立の専門家が移行状況をチェックするほか、更なる投資によるインフラ整備の必要性を指摘。安全かつ豊かで環境に優しいエネルギーにより、ドイツが今後も工業国としての立場を維持するとしている。


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