経産省 産業競争力部会、震災後初 「停滞の中の危機」と認識

経済産業省の産業構造審議会産業競争力部会(部会長=伊藤元重・東京大学経済学研究科教授)が1日、1年ぶりに開催された。

開始に先立ち、海江田万里経産相が挨拶に立ち、大震災に伴い、エネルギー供給やサプライチェーンの途絶など、日本に降りかかった新たな制約を認識する一方、「停滞の中の危機だからこそ官民の英知を合わせてわが国の競争力を強化」と、新成長戦略の敢行を明言して、活発な討議を求めた。

経産省は昨夏、新成長戦略の根幹をなす「産業構造ビジョン2010」を策定したが、今回会合では、その後の大震災による日本経済を巡る状況変化を説明した。復旧・復興のための新たな財政負担発生などに加え、東日本を中心とした大規模な電力供給力の減少により、例年にない節電・ピークシフトを強いられているほか、サプライチェーンの途絶、日本ブランドの信頼性低下といった課題を掲げた。さらに、原子力災害により、立地競争力の強化には、「これまで以上の危機感を持って取り組むことが必要」との問題意識を強調。

産業競争力の観点からのエネルギー政策としては、(1)安定供給(2)低廉価格(3)環境適合――を基本に据えた上で、(1)原子力の安全性(2)有事におけるエネルギー安定供給(3)供給不安・コスト上昇・環境負荷増大――を震災で明らかになった課題としてあげた。原子力に関しては、震災による事故原因の徹底究明と安全規制の抜本的見直しを行なった上で、核燃料サイクルを含む位置付けや実施体制について検討すべきとしている。

委員からの意見では、千金楽健司・アパレルウェブ代表が、「中国の繊維製品生産拠点を日本に戻す動きが、今回の原発問題で完全に吹っ飛んだ」などと憂慮。一方、秋山咲恵・サキコーポレーション社長は、日本のロボット技術が活躍していない現状を述べた上、「原発事故はあってはならない」という思いが、基礎技術の実用化を妨げていることを指摘し、今後、事故の安定化を通じ他産業も支える一技術を育て上げる必要に言及した。


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