駐日トルコ大使が記者会見 シノップ交渉 原子力計画断念せず

4月に日本に着任したばかりのA.ビルギチ駐日トルコ大使(=写真)は5月27日、東日本大震災の影響で中断しているシノップ原発に関する日本との交渉について「年末までに交渉が完了すれば2019年という現在の稼働スケジュールに間に合う」との考えを表明した。

震災後も日本とその技術に対する信頼はまったく揺らいでいないとし、日本との協力でシノップの案件を完成させたいという期待に変わりはないと強調している。

これは同日、日本記者クラブでの昼食会で明らかにされたもの。同大使は着任後、震災に起因する福島事故により日本の原子力部門に対する信頼が薄れたのではないかという質問を幾度となく受けたと言う。同大使によれば日本はこれまで、すべての出来事から教訓を見いだし、それをバネにさらに完璧なものを作り出すという実績を重ねてきた。このことから、今回の地震で、日本こそさらに完璧な安全設計を作り出せるとの期待が増してきており、日本との交渉が終了するまでは他国からの交渉開始要請に応じない方針を堅持している。

震災の前後で、耐震設計その他の安全問題で交渉条件が変わったかとの質問には、第一にトルコは地震国ではあっても大規模な津波が発生する地域でない点を強調。新たな条件を加えるということはないが、事故の教訓から新たな安全装置を求めることは考えられると述べた。

また、安全基準について今後、多少の変更や新たな措置が国際的な議論の末に講じられる可能性に触れ、日本やトルコに限らず国際原子力機関(IAEA)などの管轄で定められることになるだろうとの見通しを示した。

日本との交渉についてはさらに、エネルギー省のユルドゥズ大臣が「あと3〜4回交渉できればまとまる」と発言したことを明らかにし、年末までに交渉が完了すれば2019年の稼働開始に十分間に合うという印象があると明言。これと同時に、原子力協力協定の締結など政府間の交渉も継続する必要性があると指摘した。

同大使はこのほか、近年の世界の原子力に対する関心動向を見るにつれて、世界のどの国にとっても原子力発電が欠かせない存在であり続けるとの考えを表明。この点からも資源に恵まれないトルコのみならず、日本さえも原子力エネルギーを諦めることはできないはずだと指摘しており、少なくともトルコには原子力発電所の建設計画を断念する考えはないと断言している。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで