イタリアの原子力国民投票 9割が脱原子力を支持

12日と13日の両日、イタリア全土で行われた原子力発電の復活に関する国民投票で、投票に参加した国民54.79%のうち94.05%が原子力発電所の建設に関する規則の取り消しに賛成した。「任期中に原子力の復活に道筋を付ける」ことを公約に掲げて選出された現政権だったが、ベルルスコーニ首相(=写真)は「多くの国民が参加し意思表明した結果であり、政府と議会には真摯に受け止める義務がある」として、原子力復活の断念を表明、同国における脱原子力が確定した。過去に大規模な停電を経験した上で同国民が選んだ道とはいえ、火力80%の電力供給や欧州諸国中最も高い電力料金から逃れる方策は、依然として不透明なままだ。

今回の国民投票では原子力復活法のほかに、首相を含めた閣僚の訴追免除法など合計4件に関する賛否が問われたが、憲法改正以外で投票結果を有効とする「有権者の50%以上」が参加したのは1995年以来初めて。福島事故直後の、原子力に対する有権者の不安が最も高いタイミングで実施されたというだけでなく、首相自身が複数の裁判で訴追されていることや、連立与党が数週間前の地方選挙で大敗を喫すなど現政権の施策全体に国民の不満が募っていたことも投票への参加を促したと見られている。

イタリアはチェルノブイリ事故後の1987年に国民投票で既存原子炉の閉鎖と新規建設の凍結を決定したが、化石燃料資源に恵まれないためエネルギー自給率は15%程度。天然ガスなど輸入燃料による火力発電が全体の8割を占めるほか、フランス等からの電力輸入依存度も高い。2003年に二度の大規模停電を経験したことも現政権による原子力復活政策に弾みを付け、仏国から少なくとも4基の欧州加圧水型炉(EPR)を導入する協力覚書を交わすまでになっていた。

今回の投票で、イタリアはドイツやスイスと同様、電力の安定供給に明確な改善策を見いだす前に国民感情に押されて脱原子力への逆戻りを決めてしまった。首相は記者会見で「今後は再生可能エネルギーで一層努力する」と述べたというが、現任期切れの2013年までにどのような具体策を打ち出すかは不明だ。


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