スイス 下院が段階的廃止動議を採択

スイス議会・下院は8日の審議で原子力発電所の段階的な廃止に関する3つの動議をいずれも賛成多数で採択した。連邦参事会(内閣)が5月末に決定した政策―国内で稼働する原子炉5基は約50年間の運転寿命を終えた順に閉鎖していき、2034年までに脱原子力を完了――を受けたもので、これらの動議は今後、上院審議に回される予定である。

スイスではチェルノブイリ事故後の1990年に原子力モラトリアムに関する国民投票が実施され、2000年までの10年間、原子炉の新設を凍結するという脱原子力時代を経験。2003年の原子力法改正と国民投票で、ようやく原子力オプションの維持が明確に打ち出され、2008年に既存炉3基のリプレース計画が浮上したところだった。福島事故の影響により、ドイツ同様、新たな原子炉の建設を待たずに脱原子力への回帰が決まっている。

8日の下院審議では、緑の党が提案した動議により、「連邦参事会は今年の夏までに段階的な脱原子力のシナリオを作成する」との方針を採択。保守民主党(BDP)の動議では、「原子力法の改正により、2012年1月以降、原子炉の新設に許可を与えない」という提案が可決された。

また、キリスト教民主党(CVP)が提案した動議では、「安全基準を満たさない原子炉を直ちに閉鎖」や「原子力なしで将来の電力供給を保証する戦略が提出されるべき」、「再生可能エネルギーとエネルギーの効率化を促進する」などの4項目が了承された。

これら3件の票決では、いずれも約100名が超党派で賛成する一方、反対票を投じたのは最大与党のスイス国民党(SVP)、および企業寄りの自由民主党のみだったと伝えられている。


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