ベリホフ総裁 レベル7の事故語る 炉心燃料の把握が課題

原産協会は13日、ロシア国立研究センター「クルチャトフ研究所」のエフゲニー・パーブロビッチ・ベリホフ総裁(=写真)が来日したのを機に、東京都内で「チェルノブイリ事故から25年〜福島第一原子力発電所事故への教訓」と題する講演会を開いた。

ベリホフ総裁は、「チェルノブイリ原発(旧ソ連製RBMK型炉4号機)事故は世界の原子力発展にも大きな影響を与えてしまった」と述べ、国際原子力事象尺度(INES)で同じ最悪のレベル7を記録した事故を述懐した。1986年4月26日に事故が発生し、自らも事故3日目に上空のヘリコプターから炉心部を眺め、炉心燃料がすでになくなっていることを確認するなどの経験を通し、一刻も早い事故収束と周辺地域への放射能影響の低減などに努めた、と述べた。

事故当時は、減速材の黒鉛の火災による放射能拡大、水蒸気爆発による放射能拡散などの問題のほかに、再臨界の可能性もあり、地下水への汚染の可能性も否定できない状況だった。そうなれば、ウクライナだけでなく、欧州全体にも放射能汚染の拡大が心配されたことから、「英雄的作業」で炉の下にトンネルを掘って冷やす熱交換器の設置や、鉄板を地下に打ち込んで、地下水への汚染拡大を防いだ、とした。

その年の11月末には一応、プラント全体を覆うシェルター(いわゆる「石棺」)が完成したものの、内部は外から見るのと違って、スマートなものではなく、燃料が溶け金属やコンクリートと混ざって冷え固まってできた“溶岩”の放射線量は、1時間当たり数千レントゲン(数十Sv/時)と極めて高く、サンプル採取のためには、わずか数秒の時間しか作業ができなかったと振り返った。

最大の課題は、炉心にあった燃料がいったいどこにいってしまったのか、その把握が重要であり、特殊なペリスコープや耐高放射線ビデオカメラを開発して内部を観察したり、原子炉建屋に最長10メートルほどの貫通部を設け、放射線量を測ったという。中長期的には福島第一でも同様の措置が必要なことを強調した。

ベリホフ総裁は、福島の事故収束に向けて、チェルノブイリ原発の設計当事者でもあり、事故の収束に大きな力を発揮したクルチャトフ研究所の役割、能力、設備などを紹介し、原子力潜水艦の解体から放射能汚染土壌の除染・処分までの経験を活用できる、とした。

今後の世界の原子力発電動向については、「原子力なしでは安定した経済発展はできない」と述べ、「いまはエネルギー危機のさなかにある」と強調した。


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