IAEAの原子力安全閣僚会議が開幕 「宣言」で安全評価促す

福島事故後の世界の原子力発電所における安全性強化策を検討する「原子力安全に関する閣僚会議」が国際原子力機関(IAEA)の主催で20日にウィーンで開幕し、25項目から成るIAEA閣僚会議宣言が採択された。

同宣言では原子力発電国に対し、原発の危険性と安全に関する包括的評価を透明性のある方法で実施するよう奨励。定期的な審査や評価ミッションを通じて、IAEAの枠組の中で国際的かつ独立の立場の原子力安全専門家から評価を受ける利点を強調した。ただし、強制力のある事項ではないため、その効果の程については疑問視する向きもある。

このほかIAEA事務局長に対しては、同宣言および閣僚会議での結論に基づいて緊急時対応や放射線防護等に関する行動計画案を9月の総会までに提出要請。同理事会には関係予算の手当を要請するなど、計画の実行に向けて早急な対処を促す内容となった。

この会議は、福島事故で揺らいだ原子力に対する信頼を取り戻すには、同事故からの教訓をいち早く検証・今後の善後策に反映させる必要があるとして、天野事務局長が3月末に開催日程を加盟各国に告知していたもの。24日までの5日間、各国の閣僚および代表者レベルで声明を述べる全体会議と、国際的に著名な専門家達がパネル形式で参加する分科会議で協議を行う。福島事故の実態把握のためIAEAが派遣した専門家チームのM.ウェイトマン団長も初日に登壇し、同チームによる暫定的な評価結果を報告した。

宣言文では特に、福島事故を直接的に反映した項目として、「同事故に関連するIAEA安全基準、特に複合的で深刻な災害に関連するものの見直しを含め、包括的で完全に透明性のある事故評価を日本およびIAEAから得る必要がある」や、「国内規制当局の権威、権限および資源のさらなる強化、効果的な独立性の確保に努力を傾注する」などが盛り込まれた。

また、「安全分野における国際的な法的枠組み強化の可能性を検討する」の項目では、IAEAの強化された取り組みを意識。国内的・地域的および国際的な緊急事態に係わる準備と対応の改善に関しても、「対応と支援に関するIAEAの既存の能力を促進・拡大する」としてIAEAの役割強化を強調している。このほか、原子力損害に対して適切な賠償を提供するため、賠償責任に関する1つの国際的な制度の必要性なども明記されている。


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