フィンランドの新政権 「新規計画は認めず」

フィンランドで22日に、6党の連立による新政権が誕生した。4月の議会選挙後、2か月間にわたって連立協議を続けていたもので、中道右派・国民連合党のJ.カタイネン党首を首相とする新政権はこの日、今後の施策を記した「政府プログラム」を公表。原子力関連では、前政権が「原則決定(DIP)」を与えた2件分の原子炉建設計画については「早急に建設許可を与える」との方針を示す一方、「これ以後は新たなDIPは与えない」と明言しており、福島原発事故が同国の原子力政策に少なからず陰を落としていることが明らかになっている。

議会選では、これまで与党だった中央党が議席を大幅に減らして政権から外れ、反EU政策を掲げる保守系右派の「真正フィンランド人党」が34議席増やして躍進した。「政府プログラム」の内容も、財政破綻したポルトガルに対するEUメンバーとしての支援問題等、公的資金の安定政策などに主眼が置かれ、原子力については各党首の記者会見でも全く触れられなかったと伝えられている。

同プログラムのエネルギー政策は「効率化と省エネの促進」により電力の自給状況改善を目指すと明記。再生可能エネルギーなど低炭素電源の増強による気候変動対策も重要だとしているが、風力や日照時間に乏しい国柄であるせいか、水力以外は比重が軽い印象だ。

天然資源に恵まれないフィンランドでは現在、4基の原子炉が稼働するほか、世界で初の欧州加圧水型炉(EPR)となる5基目の建設が進められている。後続計画についても昨年、議会が電力事業者3社による提案のうち2件について政府のDIPを承認していた。

フォータム社の声明

3社のうち、ロビーサ3号機建設計画の承認が得られなかったフォータム社は新政権のプログラムについて声明を公表しており、「今後4年間は当社の計画推進が難しくなった」とコメント。次の政権が原子力推進に積極的であったとしても、その前に既存のロビーサ1号機の運転認可が切れてしまうとの悲観的な見解を示している。

また、オルキルオトの放射性廃棄物最終処分場建設計画に関し、新政権が「調査が完了し次第、必要な判断を下す」としている点についても、「実際に処分が行われるかどうかは不透明」と指摘した。

さらに新政権は、前政権がEU規制との兼ね合いから昨年8月に撤回した「原子力に対する棚ぼた利益税」を再び提案。温室効果ガスの排出量取引に伴い、電力会社が偶発的に得ている収益の徴収を狙ったもので、同政権はウラン税についても導入を検討している。

これについても同社は「特定の電源に対する差別的な課税であり、気候変動対策の目標と矛盾する」と反発。電力輸入を助長するとともに、化石燃料発電の直接支援につながると批判している。


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