仏の公共投資計画に変更なし 第4世代炉開発に10億ユーロ

仏国のN.サルコジ大統領は6月27日、原子力の一層の安全強化に向けた研究と第4世代原子炉の開発のため、仏政府の原子力研究開発プログラムに対する合計10億ユーロ(1168億円)の投資計画に変更がないことを明らかにした。福島原発事故後、近隣のドイツやスイスが脱原子力に向かう一方、仏国は2009年12月に公表した方針を堅持。再生可能エネルギーを含め、低炭素エネルギー技術の開発で同国が世界のリーダーとなり、安全性に優れた原子力開発継続の意思を貫く考えだ。

仏国政府が09年末に開始した「未来のための公共投資」計画では、350億ユーロの新規国債発行により優先投資していく産業分野を特定。「持続可能な開発とエネルギー」分野のため割り当てられた51億ユーロのうち、10億ユーロが将来の原子力開発に投資されるとしていた。

仏政府はこのうち、6億5160万ユーロを第4世代の新型ナトリウム高速冷却炉となる「ASTRID」の詳細設計等に投入。アレバ社と仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)が実施中の共同作業を支援する。ASTRIDは現在、予備設計段階にあり、2017年に建設に進むか否かの判断を下す予定だ。

また、2億5000万ユーロをCEAがカダラッシュで建設中の「ジュール・ホロビッツ研究炉」(タンクプール型、熱出力10万kW)に充てる。同炉は高経年化対策や次世代炉の新素材開発用として08年に着工。モリブデン99など医療用放射性同位元素の生産機能も重視され、予算が拡充された。

さらに、1億ユーロが放射性廃棄物の処理と貯蔵研究用となっている。

「持続可能な開発とエネルギー」分野ではこのほか、再生可能エネルギーなど低炭素エネルギー技術の実証に13億5000万ユーロを充当。また、有望な低炭素エネルギー・プロジェクトを支援する官民共同の研究基盤である「優良低炭素エネルギー研究制度(IEED)」にも10億ユーロを投入するとしている。

記者会見で福島事故後の原子力政策の変化について問われたサルコジ大統領は、「仏国の原子炉が国際入札に破れた原因は、他国のそれより安全性に優れていたが故に高額になってしまった点にある」と前置き。さらなる安全性向上に対する投資の意義を強調するとともに、安全性の劣る古い原子炉を保持し続けるだけでは一層安全な炉の研究開発が滞ると指摘。「原子力モラトリアムなど無意味だ」と断言した。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで