カナダのSNCラバリン社 AECL原子炉部を買収

カナダを本拠地とする大手エンジニアリング・サービス企業のSNCラバリン社は6月29日、カナダ原子力公社(AECL)の商用原子炉部門を1500万加ドル(12億7200万円)で買収することでカナダ政府と合意した。AECLが開発したCANDU炉(カナダ型重水炉)の新規建設および既存炉の運転寿命延長プロジェクトについては知的所有権に対するロイヤリティを支払う一方、これまでに生じた負債はそのままAECLに留め置かれる。

カナダの国営原子力研究開発事業体であるAECLの原子炉部門は1950年代からCANDUの開発を開始。これまでに7か国で34基のCANDU炉を建設してきた。(=表)しかし、国営という立場は株式投資が不可能であるなど政府以外からの資金調達が困難であり、カナダ政府は同公社の損失補填に連邦予算を無制限に充てることは難しいと判断。2009年12月、国内150社に3万人以上が雇用されているカナダの原子力産業を維持していくとともに、AECLを将来的に世界の新規原子炉建設計画で他国メーカーと競合できる持続可能な事業体系とするため、民間部門からの戦略的投資を募集していた。

SNC社は今後、競争法など関連する行政上の承認を待って初秋を目処に買収手続きを完了。AECL原子力部門の従業員約1200名は、SNC社の100%子会社のCANDUエナジー社に移ることになる。主要事業はCANDU炉の新規建設と既存炉の運転寿命延長と関連サービスで、カナダ国内のみならず国際的にもカナダの原子力部門の専門的知見と経験を生かして新たな市場を開拓していく考えだ。

改良型CANDU6(EC6)開発計画の完了は特に優先順位の高い事業で、これにはカナダ政府も7500万加ドルの支援を約束。国内オンタリオ州での新規建設のほかに、ヨルダンやルーマニア、アルゼンチン、トルコ、中国への売り込みを目指している。

また、既存CANDU炉の寿命延長については、ブルース発電所やポイントルプロー、ジェンティリー2号機などの国内炉、および韓国の月城発電所のプロジェクトで責任を全うする方針だ。

なお、医療用放射性同位体の生産など、AECL・チョークリバー研究所の研究部門は買収の対象外となっている。


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