仏安全局 フェッセンハイム1で 40年運転を条件付き許可

仏原子力安全規制当局(ASN)は4日、同国原子炉の中で最も古く34年稼働しているフェッセンハイム原子力発電所1号機(=写真)(PWR、92万kW)に対して、40年間の運転を条件付きで許可する裁定を下した。福島事故後に、国内原子炉全基に実施される補完的な安全評価(ECS)の結果を待って、今年の後半に政府が正式に最終決定する見通しだ。

ECSの結果を先取りしたわけではないと説明しつつ、ASNが同炉に新たに義務付けた主な安全要件は、@コリウム(炉心溶融物)に対するコンクリート製ベースマットの耐久性強化を2013年6月末までに実施A冷却機能を喪失した場合の残留熱除去系の改良を2012年末までに完了――となっている。

仏国では原子炉の運転許可に決まった有効期限はなく、10年ごとに行われる大がかりな定期安全審査の結果で次の10年間の運転を許可。同審査では@すべての安全要件を遵守していることA内外の事例からの教訓の勘案、および最新施設で適用されている要件の遵守による安全レベル向上――が求められる。また、少なくとも10年間は高経年化に伴う現象を管理可能であると確証しなければならない。

1977年に運開したフェッセンハイム1号機では、ASNが2009年10月から2010年3月にかけて3度目の「10年目審査」を実施。昨年11月に同審査をクリアしたトリカスタン1号機(PWR、95.5万kW)に次いで、ASNから40年間の運転が可能と認定された原子炉となった。両炉ともフランス電力(EDF)が所有する90万kW級PWR34基の中では最も運転歴が長いが、ASNのAC.ラコステ局長は09年7月、「90万kW級PWRを40年間運転するにあたり、全般的に影響を及ぼすような課題は特定されなかった」とする書簡をEDFの会長宛に送付。ただし、原子炉毎の10年目審査は必須である。

トリカスタン炉で火災

なお、トリカスタン1号機の運転延長については、ASNは新たな技術要件32項目を6月30日付けでEDFに通達した。2014年までに洪水対策の強化実施を求めているほか、地震への耐久性を高める5つの規定を義務付け。水素爆発による原子炉の閉じ込め機能喪失を防ぐため、建屋内に設置する水素再結合装置の数と配置についても指示するなど、福島事故からの教訓を盛り込んだものとなっている。

しかし、同発電所ではその数日後の7月2日に変圧器で火災が発生。非原子力部分の事象であり放射線の漏洩はなかったが、高経年化炉で発生した事象であることから、同炉およびフェッセンハイム炉の運転延長に対して環境保護派から懸念の声が高まっている。


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