ドイツ 脱原子力法案を議会が可決

16の州政府代表で構成されるドイツ議会上院は8日、2022年末までに同国の原子炉17基を送電網から外すことを盛り込んだ原子力法改正を含む一括法案を採択した。同法案は6月30日付けで議会下院も513対79の賛成多数で可決しており、連邦大統領による署名の後、ドイツは福島事故後に脱原子力が法的に確定した最初の主要工業国となる。

A.メルケル政権は政府発表の中で、風力など再生可能エネルギー開発の促進枠組法案も承認されたと強調。脱原子力の完了時期を当初予定から早めたことにより、今後は一層のエネルギー効率化や省エネ効率の高い建物建築の加速などと相まって、将来の世代においても現世代と同等の繁栄と快適さが享受できると謳っている。

一方、同法案には原子力発電シェアの一部を代替するため石炭およびガス火力発電所の新規建設が盛り込まれており、「脱原子力の穴埋めのほとんどは火力」との分析家の指摘は、6月に新たなエネルギー戦略を閣議決定した時点からあった。また、温室効果ガス排出抑制政策との兼ね合いについては言及されていない上、再生可能エネルギーの発電シェアも現時点で約17%に過ぎないことから、一部の分析家は今回の議会承認を「深く考えずに、政府案にめくら判を押した」と形容。昨年、メルケル政権に原子炉の運転期間延長を実現させた保守派の中には脱原子力を根強く批判する向きもあるが、福島事故後に急転直下で政策転換してしまった段階では、冷静に考え始めたとしても元に戻すのは難しいとの悲観的見方が大勢だ。


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