安全評価実施計画 保安院が指示 安全裕度の上乗せ等確認

原子力安全・保安院は15日、原子力発電所の安全性に関する総合的評価、いわゆる欧州のストレステストを参考にした安全評価について、具体的手法と実施計画をまとめ、同日の原子力安全委員会臨時会議に報告した。今後、最終的調整を図り、1週間内にも事業者に対し指示される見通し。

同安全評価は、去る11日、枝野幸男官房長官、海江田万里・経済産業相、細野豪志・内閣府原発担当相の連名で、政府としての実施方針が発表されている。福島事故後の緊急安全対策も踏まえ、定期検査で停止している発電所を対象とした1次評価と、すべての既設発電所を対象とした2次評価からなり、いずれも事業者が実施した評価結果について、保安院および原子力安全委員会が確認する。

評価は、設計上の想定を超える事象に対し、1次、2次それぞれ、安全裕度の上乗せ、総合的な頑健性を確認するが、福島の事故を踏まえ、地震、津波、全交流電源喪失、最終的な熱の逃し場(最終ヒートシンク)の喪失を対象事象とし、どのような順序で事象が進展していくかを「イベントツリー」形式で示し、各段階で使用可能な防護措置を検討、有効性と限界を明らかにする。事象発生時の状況として、最大出力下での運転、使用済み燃料プールが満杯といった最も厳しいプラント状態を設定し、特に、2次評価では、地震と津波重畳も想定するなど、一層過酷な条件も考慮する。

1次評価では、安全上重要な施設・機器等が、設計上の想定を超える地震動や津波により、損傷・機能喪失するかを評価し、これを踏まえて燃料の重大な損傷に至る地震動の大きさ、津波の高さを求め、設計の弱点を明らかにする。また、全交流電源喪失や最終ヒートシンクを起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程と、その継続時間を算出する。さらに、2次評価では、設計上の想定を大幅に超える事象の発生を仮定し、燃料の重大な損傷とならずに耐えられる安全裕度を評価するとともに、多重防護の観点から、1つの事象から連鎖的に損壊が起きる「クリフエッジ効果」を特定し、潜在的な弱点を明らかにする。

評価対象は7月末時点で、定期検査中で起動準備の整ったプラントに1次評価を、原子力災害の事態収拾が進められている福島第1、2発電所を除く全原子力発電所について2次評価を実施する。2次評価は、発電所単位で、年内目途に事業者からの報告を求める。

保安院は、15日の安全委員会会合などでの意見を受け、再度、評価手法を練り直して、事業者に指示を出す運びだ。

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八木誠・電気事業連合会会長は、15日の定例記者会見で、首相によるストレステスト実施の唐突な発表により、「立地地域の混乱を招き、不信感を高める結果となった」と憂慮した上、「第一線現場を中心に20年、30年という長い時間をかけて培われてきた立地地域や地域社会からの信頼がすべての出発点」として、地域始め国民の不安解消・信頼回復に全力を尽くす考えを強調した。


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