早大主催シンポ 井川氏(読売)が訴え 「今は無理でも対話準備を」

早稲田大学は15日、東京・大久保の西早稲田キャンパスで未来エネルギーシンポジウム「東電福島原発事故とその教訓」を開き、シニアを中心に約200人が参加した(=写真)。

橋本周司・早大常任理事が開会挨拶を行い、「原子力は止めるにしても100年仕事となる。技術を社会の中でどうやって使っていくのか、先進国としてまさに日本の先進性がこれから問われる」と述べた。

福島第一原子力発電所事故の経過と課題について岡芳明氏(早大)、事故の分析と対策について奈良林直氏(北海道大学)、耐震設計審査指針の考え方と過酷事故対策について平野光将氏(東京都市大学)、放射線の健康影響について甲斐倫明氏(大分県立看護科学大学)、地元の視点から角山茂章氏(会津大学)、原子力をめぐる議論「どう対話すべきか」を井川陽次郎氏(読売新聞社)が講演した。

岡氏は「水素爆発の後は、すぐに牛乳などの摂取制限をすべきだった」と述べながらも、住民避難はうまくいった、と評価した。

奈良林氏は「今後の原子炉は、自然冷却システムを採用し、自ら事故を収束させる機能をもったものを開発していくべきだ」と述べた。

角山氏は今回の福島第一の事故を国際原子力事象評価尺度(INES)で「レベル7」と評価したが、放射能放出量だけでなく、放射能の汚染範囲なども考慮して再評価し、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と米TMI事故の間の、旧ソ連のウラル核惨事(キシュテム事故)と同じ「レベル6」にすべきだ、と主張した。

一方で角山氏は、近く県内で除染作業が始まるとした上で、除染には「水で洗ったり、土をはつるなど地道な方法しかない」と指摘、売れないお米はエタノールに加工して利用すべきだと提案したあと、「いま県民には、福島サイトを放射性廃棄物の最終処分場にはするな、という強い意志がある」と紹介した。

井川氏は、「いまは原子力反対なら何でもいいという雰囲気で、対話は不可能」と述べ、ネット上での怪情報や無責任な発言、原子力関係の文化人への批判、問題の多いゲーム・ソフトの横行など、具体的な事例を挙げながら批判した。その上で同氏は、「いまはできなくとも対話の準備をしておくことは大切であり、特に科学者・専門家はしっかりと発言していかなければならない」と結んだ。


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