飯舘村の本「までいの力」 福島事故で変容 美しい自然を紹介

「日本で最も美しい村」――をうたい文句にこの本は出版されるはずだった。震災の3月11日までは。

福島県・飯舘村――人口6000人余、約1700世帯の福島県北東部に位置する阿武隈山系の高原の村。村民一人一人の創意と工夫で、力を合わせて村を作り上げてきた。

東日本大震災の直後、飯舘村は南相馬市など浜通りから数千人の避難者を受け入れた。福島第一原子力発電所事故後も30キロメートルは離れている村は当初、「避難の必要はない」と言われていたが、その後、政府から「計画的避難区域」に指定され、全村民が避難しなければならなくなった。

豊富な写真と文書で、ゆったりと時間が流れる農村生活や自然体験のすばらしさを紹介するために作ったこの本「までいの力」(までい=「真手(まて)」という古語が語源で、両手の意味。転じて、丁寧に心を込めて、手間ひま惜しまずという意味の東北地方の方言)は、事故後、菅野典雄村長の前書きも大きく内容が変化し、地震発生後の経緯表や写真を加えて、出版された。いまは誰も住んでいない村の素晴らしい自然を、村民の手に再び取り戻すために、全国民の支援を訴える象徴となっている。

定価2500円(税込み)、企画編集「までい」特別編成チーム、SEEDS出版(福島市、電話024―597―6800)。


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