【原子力ワンポイント】 日本の放射線・放射能基準−−福島第一原発事故〈番外編(11)〉 20ミリSvの被ばくでは0.1%のがん増加

人口1万人の町で考えると、もともと3300人が将来ガンで死亡すると考えられているのが、20ミリSvの被ばくをした場合、受動喫煙や野菜摂取不足によるガンの増加(66人以上)より小さく、10人ほど増えるかもしれません。ICRPは合理的に達成できる限り被ばく線量を低く保つことが必要と言っています。

ゲンくん 低線量被ばくではどんな影響があるの。

カワさん ICRP(国際放射線防護委員会=放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織)では100ミリシーベルト(Sv)以下の線量での被ばくのことを低線量被ばくと言っていて、将来がんで亡くなる人が増えると仮定しています。

ゲンくん どのくらいの人が増えるの。

カワさん 広島・長崎原爆のデータから、1000ミリSvの被ばくをした人達は被ばくのない人達に比べて、ガンになる人が5%程度増えることがわかっているので、ガンになる人が、100ミリSvの被ばくをすると0.5%、20ミリSvの被ばくをすると0.1%増えることになります。人口1万人の町で考えると、日本人の3分の1がガンで死亡するので、もともと3300人が将来ガンで死亡するのが、20ミリSvの被ばくをすると3310人と10人ほど増えるかもしれません。国立がん研究センターによれば、100ミリSv以下の被ばくによるガンの増加は、受動喫煙や野菜摂取不足によるガンの増加(1.02〜1.06倍)より小さいとされています。ICRPは、放射線の影響を子供は大人の3倍受けやすいと仮定しているので、子供の場合は30ミリSv以下の被ばくによるガンの増加は、受動喫煙などによるガンの増加より小さいと考えてもよいでしょう。

ゲンくん ICRPは低線量被ばくに対してどんなことを注意しているの。

カワさん 原発から出てくる放射性物質はほとんどないと言えるほどわずかになったので、ICRPが言っている現存被ばく状況(放射性物質の漏れが止まり、放射能が残っている状態)とみなせると思います。この状況では、年間1〜20ミリSvを越えない範囲で暮らしながら、徐々に普通の1ミリSvのレベルに環境を戻すことが適切であると勧告しています。ここで1〜20ミリSvと幅があるのは、被ばく線量を、経済的・社会的要因を考慮した上で合理的に達成できるだけ低減することが最適と考えられているからです。

ゲンくん 「経済的・社会的要因を考慮した上で合理的に達成」とはどういうことなの。

カワさん 被ばく線量は低いことが望ましいのですが、他のデメリットが高くなるというケースがあると思います(必要以上に神経質になりストレスを感じるなど)。また、計画的避難区域の老人が住みなれた家を離れ、見知らぬ所で暮らすことが良いのか検討してその場所に残ったことも該当する事例と思います。少し観点が異なりますが、4月頃と違い原発での爆発の心配はもうほとんどなく、大気中の放射能濃度が測定されなければ空気中に放射能は無いと考えられるので、マスクをする必要はないでしょう。また、地表から出るガンマ線は衣服などでは止める効果がないので、長袖を着たり長ズボンをはいたりして肌の露出を避ける必要はありません。夏は暑さに負けてしまうことのほうが心配ですので、専門家による、粉塵を吸うことによる被ばくリスク評価がなされると良いと思います。(原産協会・政策推進部


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