全原協が総会 福島事故の避難首長も出席 被災地の苦悩訴え

全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協、会長=河瀬一治・敦賀市長)の平成23年度総会が4日、福島第一原子力発電所事故で被災した地元自治体の首長らも出席して、2か月延期後、東京・千代田区の全国都市会館で開かれた。

総会では冒頭、震災の犠牲者に黙祷を捧げたあと、河瀬会長が挨拶(=2面に全文)し、「原子力を取り巻く環境は、震災以降大きく変化した」との認識を示し、震災後に原子力をめぐる政府対応の混乱もあり、「これまで堅固に築き上げてきた立地地域と国との信頼関係は、大きく損なわれた」と述べた。

同会長は、一刻も早い事態の収束と、被災者が1日も早く生まれ育った町に戻れるよう、できる限りの取組みを行っていくと決意を述べた。

また同会長は、国の根幹に関わる最重要課題であるはずのエネルギー政策について、「この度の政府の軽々しい姿勢は許し難く、強い憤りを禁じ得ない」と語り、原子力がこれまで果してきたエネルギー安全保障上の役割や電力安定供給への貢献、代替エネの国民負担や開発のための時間軸など、十分な時間をかけて議論すべきだ、と指摘した。

最後に会長は、各立地自治体にはさまざまな見解があることは承知しているものの、「我が国のエネルギー事情を鑑みると、いまだ原子力の果すべき役割は失われていない」と強調して、挨拶を締めくくった。

次いで、事業報告など原案どおり承認し、「原子力発電に関する要望書」と「福島第一原子力発電所事故に関する特別要請」を議決した。

総会後半の「国との意見交換」には、海江田経産相(=写真)、細野原子力担当相、笹木文部科学副大臣、近藤原子力委員長、各府省から責任者らが出席した。

海江田経産相は、立地自治体の首長らに対して、「多大な心配、迷惑をおかけしたことをおわびしたい」と述べた後、「事故収束のステップ1を終え、着実にステップ2を進めていきたい。政府一丸となって取組み、最後まで責任をもっていきたい」と強調した。

次いで細野担当相は、「事故収束が私の最大の責任」とし、事故を再発させないために、新たな規制機関を設ける、と述べた。また、「これから原子力は厳しい冬の時代を迎えると思うが、皆さんの本当の理解が不可欠だ」と強調した。

近藤委員長は、「事故後、社会環境は大きく変化したと認識しているが、他方、エネルギー安定供給や二酸化炭素対策もあり、国際社会の中で生きていかなければならない日本として、どのような道を歩んで行けばいいのか考えて行かなければならない」とした。

被災自治体からの意見では、村上東海村長が、「10万人の避難者をどう救えるのか。人を救う所から新しい原子力政策をスタートさせなければならない」とした上で、「いかにも除染すれば戻れると言われているが、戻れないとしたら別の対応をしなければならないのではないか」と指摘した。

自らも埼玉県の旧高校内に避難している井戸川双葉町長は、「悔しい。我々は何を信じて町づくりをやってきたのか。交付金で作ってきたものも、全部置いてきている」といまの心情を語った後、「安全神話を語り、原子力発電を日本の産業として進めてきた皆さんは、(この状況を)何とかしてほしい」と訴えた。


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