英国 福島事故が影響 MOX加工工場を閉鎖

英国・原子力デコミッショニング機構(NDA)は3日、稼働率が低迷していたセラフィールドMOX燃料加工工場(SMP)を閉鎖するとの方針を発表した。

福島原発事故の影響により、日本の10電力会社所有のプルトニウムをMOX燃料に製造し、プルサーマル計画に使用する見通しが不透明になったことから、NDAではSMPの今後について再検討。燃料製造契約への影響や変化した商業リスクを分析した結果、SMP維持のために英国民にさらなる財政負担を強いるよりは、実質的に最も早い時期に閉鎖するのが唯一合理的な行動と判断したと説明している。

NDAは今後も、日本のプルトニウムを国際的な安全基準に則って安全に保管するとともに、その再利用に関する日本の電力会社の方針を責任を持って支援していくため、更なる協議を行う方針。

2002年に操業を開始したSMPは、エンジニアリングおよび技術上の問題等により、設計上の生産能力である年間120トン(重金属換算)よりはるかに少なく、9年間の稼働期間に生産したMOX燃料は15トン程度と言われている。

08年には顧客からのMOX製造注文を仏アレバ社に下請けに出さざるを得なくなるという状況に陥ったが、NDAは09年10月、操業実績の向上を図りつつ、既存の製造契約を遂行する方針を公表。NDAの商業輸送部門である国際原子力サービス(INS)が、SMPの操業継続を保障するために新たな契約の確保を命じられた。また昨年5月には、日本原子力発電を含む日本の電力10社の英国でのプルトニウム全量をSMPでMOX燃料に加工し、日本に輸送することで全体的な枠組み合意に達していた。

なお、今回の決定はSMPのみに係わる商業的な問題によるもの。英国には現在、原子力の民生利用で抽出したプルトニウムが120トン存在し、このうち28トンが海外顧客の所有である。これらの長期的な管理方法を探るため、政府は今年2月から5月まで(1)長期貯蔵の継続(2)固化後に地層処分(3)MOX燃料に加工し、新規および既存の炉で再利用――などの選択肢を公開協議に付した。

これらのうち、英国政府は(3)案を「最も有望と思われる予備的な政策見解」として提案。難点として、SMPの稼働率が低く、多額の経費を投じて新たな加工工場を建設する必要がある点を指摘していた。核拡散の不安が少ないなど同案の有用性や合理性が、安全面や金銭的な価値と言った要求事項に見合っていると検証されれば、実行に移される可能性も少なからずあると見られている。


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