SNWシンポジウム 環境修復など講演 時間軸の明確な目標を

日本原子力学会のシニアネットワーク連絡会(=SNW、宅間正夫会長)の第12回シンポジウム「どうする、これからの原子力――福島第一原子力発電所事故を踏まえた我が国原子力の今後」(=写真)が6日、東京大学の武田先端知ビルで開かれ、一般市民も含め約200名の参加者が集まった。

宅間会長は挨拶の中で、「炉心溶融とそれに伴う放射能汚染、住民避難は、原子力に長い間携わってきた者として痛恨の極みであり、心よりお詫びしたい」と述べた。

今後も数十年間は原子力と共存していかなければならないと強調した同会長は、国の安全保障、地球温暖化対策からも、「安全リスクが突出する原子力にとって、理性の技術と感性の安心の両立が不可欠だ」と指摘、「新たな日本をめざし、歴史的使命を考えるとき、原子力の平和利用技術を維持していくことが重要だ」と強調した。

福島第一原子力発電所の事故概要について尾本彰・東大院特任教授(原子力委員)が、原子力発電所の緊急安全対策について富岡義博・電事連原子力部長が、避難地域の環境修復について井上正・電中研首席研究員、福島事故後の世界の原子力政策動向と日本のエネルギー政策について村上朋子・日本エネルギー経済研究所原子力グループリーダーが講演した後、パネル討論を行った。

尾本氏は、日本が行ってきたシビア・アクシデント・マネジメント(SAM)が不十分であったことに言及し、米国で9.11以降にテロ対策をも考慮した原子力規制委員会が行った安全対策「B・5・b」要求事項を実施していれば、今回の事故はある程度防げたかもしれない、と述べた。ただ、同対策はテロ対策を含んでいるため米国でも公開されておらず、一部の概要を側聞することしかできていない、と補足した。

環境修復について井上氏は、原子力学会の活動の一環として、何度も福島を訪問し、自治体関係者との意見交換も含めて提言を行い、段階的な目標設定と「いつ帰れるか」の時間スケールを明確にした最終目標を示すことが住民からは求められている、と紹介した。

村上氏は、「日本の原子力産業は国際的に通用する戦略産業であり、いまも日本に期待する国も多くあり、あれ(輸出の話)はなかったことにしてほしいというのは、余りにも無責任ではないか」と指摘した。


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