菅政権 原子力輸出継続 ベトナム「日本から輸入」再確認 円借款も柔軟に適用

高橋千秋外務副大臣が8月10日と11日、新政府発足直後のベトナムを訪問し、ホアン・チュン・ハイ副首相に松本外相と海江田経産相連名の同副首相宛の書簡を手渡し、福島原子力発電所事故後の教訓を反映した、より高い安全水準の原子力発電所を提供していきたいと改めて伝えたのに対し、同副首相からは「日本の技術力に信頼を置いている。べトナムでの原子力発電所建設に日本の技術を取り入れたい」旨の発言を得た。高橋副大臣の訪越は、同政府新体制発足直後に行ったもので、福島事故後も日本の原子力技術に、引き続き全幅の信頼を置いていることが明らかになった。

高橋副大臣は、ハイ副首相のほかに、ヴー・カイ越日友好協会会長、タン交通運輸相、ヴォン商工省副大臣らとも会談し、ハイ副首相と同様の発言を得た。同国では3日に新政権が発足した。

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菅内閣が自民党の小野寺五典・衆議院議員の質問書に対する答弁書で、国内の「脱原発依存」方針とは別に、国際的にはこれまで進めてきた原子力協力について、今後も推進していく方針を5日に閣議決定したことから、経済産業省や外務省も対応を模索している。

同資源エネルギー庁は、トルコとの協力で7月末に幹部を派遣し、同国側から引き続き日本側との協力を継続したいとの意向を確認したことを明らかにしている。ただ、トルコとの協力では、協力の一翼を担うはずだった東京電力の西澤俊夫社長が9日の記者会見で、海外輸出への関与について「いっさい考えていない。ただ、JINED(国際原子力開発会社)を通じた協力はあり得る」と発言しており、運転支援協力などの面で対応が課題になっている。

菅内閣は海外における原子力発電の受注を成長戦略の重要な要素としてとらえてきたものの、福島第一原子力発電所事故以降、菅首相が「脱原発」発言を行い、原子力発電所の輸出も見直す方向を示すなど、政府としての方針が揺らいでいると国内外からみられていた。

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政府は19日、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合と、外務省の「ODAのあり方に関する検討」での議論を受け、中進国や中進国を超える所得水準の開発途上国に対し、具体的なパッケージ型インフラ案件の受注や資源獲得などのために直接的に有効であることが確認できる場合には、ケース・バイ・ケースで、戦略的かつ例外的に円借款を活用していくことを決定した。

これまで政府は、国民総所得(GNI)が1人当たり一定水準の中進国については環境、人材育成支援など4分野に限定して円借款を供与し、中進国を超える所得水準の同6886米ドル以上の開発途上国に対しては、ある程度の国力がすでにあり市場からの資金調達も可能との考え方から、原則として供与を行ってこなかった。

政府が円借款の方針を例外的にも転換し、原子力発電所などを含むパッケージ型インフラ海外展開に道を開こうとの強い姿勢を示したものだ。ちなみに同8000ドル以上の近傍の国(09年)は、トルコ、メキシコ、ブラジル、ポーランドなどの国々となっている。


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