ユッカ処分場計画 年度末で活動を終了 米原子力規制委が指示

米原子力規制委員会(NRC)は13日、米エネルギー省(DOE)によるユッカマウンテン放射性廃棄物処分場計画の許認可申請について、3種類の技術評価報告書の最後の1つを発行した。

2011会計年度が今月30日で終了するため、NRCではこれをもって同申請の審査活動は予算の制約によりすべて終了するとしており、同計画の安全性に関する結論を出さないまま、25年以上にわたった審査手続き関連の情報すべてについて保存措置が取られることになった。

また、ネバダ州で賃貸確保していた公聴会用の施設や設備などがすべて解約となるほか、コンピュータといった機材もNRCの別支部に移送、ネット上の関連文書サービスも閉鎖となる。

オバマ政権によるユッカマウンテン計画中止の方針にともない、DOEは2010年3月に同計画の許認可申請を取り下げる申請をNRCに提出した。しかし、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)は同年6月、この取り下げ申請を認めないとの裁定を下しており、これに対するNRC委員4名の判断は賛否同数に分かれている。

このため、委員長を含めた委員5名は今月9日にこの件に関する「覚書と指示」を作成。ASLB裁定に関する経緯を明記するとともに、本会計年度の終了に伴い、ペンディング事項も含めて同申請に関わる管理活動のすべてを終了するようASLBに指示していた。

同計画に強硬に反対しているネバダ州のH.リード上院議員は、「ユッカマウンテンを巡る長編物語が完結に近づいた」と歓迎。10月から始まる2012会計年度で上院が同計画に予算を付けていない点に言及し、同計画に替わる廃棄物処分方法を検討している有識者(ブルーリボン)委員会により、一層安全で現実的な管理戦略が策定されるはずだと強調した。

[米議会での審議状況]

上院・歳出委員会が7日に承認した2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法案によると、全体予算316億2500万ドルのうち5億8400万ドルが原子力関係予算。原子力発電の安全確保と使用済み燃料の処分に焦点を当てた内容となっており、処分計画における連邦政府の法的責任を認めるとともに、ブルーリボン委員会が中間報告書で提案した「集中中間貯蔵施設建設構想」に予算配分している。

上院に歳出法案を提出した関係小委員会のD.フェインスタイン委員長によると、原子力はクリーン・エネルギーの重要な一要素として開発利用を続けるべきであり、燃料サイクル管理の国家プログラムに一層の努力を傾注すべきだと断言。全米科学アカデミーにおける福島原発事故からの教訓研究に予算を付けるとともに、連邦政府が82年放射性廃棄物法に基づく使用済み燃料の引き取り開始に失敗した経緯を改めて解説している。

同委員長はまた、小委員会会合の席で、この失敗に伴う連邦政府の債務は2020年までに154億ドルに増大し、この問題が解決されるまでに納税者が直面する債務は年間5億ドルにのぼると報告していた。

[下院はユッカ予算復活を承認]

一方、下院では歳出委員会が7月に承認したエネルギー・水資源支出法案の中で、ユッカマウンテン計画活動経費として認可申請書の審査経費1000万ドルを含めた合計3500万ドルを復活させた。

昨年11月の中間選挙以降、下院では共和党が多数派となり、エネルギー商務委員会のF.アプトン委員長や環境経済小委員会のJ.シムカス委員長が中心となってユッカマウンテン計画の継続を後押し。ASLB裁定に対するNRCの賛否が拮抗したままになっている点から、「ユッカマウンテン計画認可申請の取り下げが了承されたとは言えない」と断言。同認可申請が現在も法的に保留状態にあるとしており、NRCによる今年度内での活動終了指示についても、同認可申請が有効であることを意味しているとの見方を示した。

また、分析家の間でも「状況は未だ不透明であり決定権は議会に移った」とする意見があり、今後の議会審議の成り行きを見届けるのが重要だと指摘している。


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