原子力事業から撤退へ 独シーメンス社CEOが表明

ドイツ最大手の総合電機メーカーとして、かつて同国で稼働する17基の原子炉すべてで建設工事を手がけたシーメンス社が原子力事業における最終章を迎えた。

同社のP.レッシャーCEO(=写真)が18日に独シュピーゲル誌のインタビューで、原子力事業から完全撤退する方針を明らかにしたもので、「我々にとってこの章は終了した」と言明。福島事故後、A.メルケル政権が2022年までにすべての原子炉の廃止という脱原子力政策に逆戻りしたことから、「ドイツ社会と政治の明確な姿勢に対する企業としての回答だ」と説明している。

今後は、同政権が総需要の35%までの発電シェア拡大を目指す再生可能エネルギーの分野で活動を拡大していくことになる。

ドイツでは2000年6月に、当時の政府が既存炉の段階的な閉鎖と新規原子炉の建設禁止で電力業界と合意。これを契機に、シーメンス社は翌7月にフラマトム社と原子力部門を統合してフラマトムANP社を設立した。その後、同JVはアレバの傘下に入りアレバNP社となったが、シーメンス社の出資比率は34%と少数であったため、企業戦略において十分な発言権を行使することはできなかった。

このため、シーメンス社は09年1月に同JVにおける技術提携を解消し、持ち株すべてをアレバ社に売却する方針を発表。3月にはロシアの原子力総合企業であるロスアトム社と対等な立場での協力覚書に調印し、2030年までに世界中で400基と見積もられていた原子炉新設計画への参画を目指すことになった。

しかし、アレバ社はこの行動が株主協定における競争禁止義務条項に反するとして、シーメンス社を国際商業会議所・仲裁裁判所に提訴。同裁判所は今年5月、2013年9月までシーメンス社が原子力発電部門でアレバ社と競合することを禁じるとともに、6億4800万ユーロの支払いを命じている。

このような背景からレッシャーCEOは原子力事業からの撤退を決意。ロスアトム社とは原子力以外の分野での共同事業を希望している。また、原子力も含めて火力発電所でも利用可能なタービン発電機の製造は継続していく方針だ。


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