ストレステスト 中間報告を提出 EU加盟の原子力発電14か国

福島事故を受けて6月から欧州連合(EU)加盟各国の全原子力発電所143基で行われていた安全性再評価(ストレス・テスト)の中間報告書が出そろった。

欧州原子力規制者グループ(ENSREG)の定めた実施要目に従い、事業者が実施している同テストの進展状況を各国規制当局がまとめて欧州委員会(EC)に提出したもの。10月末までに最終結果がまとまり次第、規制当局がそれらをレビュー、年末までに欧州理事会に提出することになっている。

中間報告書の締め切りは今月15日で、EU域内で原子炉を保有する14か国―ベルギー、ブルガリア、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、オランダ、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国―の規制当局が公表した。

仏原子力安全規制当局(ASN)やドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全省の中間報告は、主に同テストがENSREGの要目に沿って適切に行われている点を確認する内容で、現段階で結論を導き出すのは時期尚早としている。ただし独原子力省の報告書は、これまでに実施済みのストレス・テストや原子炉安全委員会(RSK)が別途実施した安全審査結果から、「さらなる改善を考慮中であるものの、国内原発全体で見た限り高いレベルの頑健さが示された」との概評を明記した。

また、英国原子力規制庁(ONR)は、「これまでのところ、設計ベース事象あるいはそれらに対する安全系の耐久性に根本的な弱点は見られなかった」と強調。設計ベースを超える事象からの修復措置の改善、小さなパラメーターの変化により事態が急激に変化するクリフ・エッジ効果の軽減といった教訓については、今後、適宜適用されることになるとしている。

同テストは福島事故直後の3月15日、ECのエネルギー委員会で実施の方針が示された後、25日のEU首脳会議で「包括的で透明性のあるリスクと安全性の評価」を実施することで正式に合意。福島第一原発では大規模な自然災害により発電所の安全機能が損なわれ、深刻な事態に陥ったことから、そうした事象に対する発電所の挙動、および安全機能喪失対策の妥当性を再評価することになった。

まず、西欧原子力規制者連合(WENRA)がまとめた実施要件の仕様書案を元に、パブリックコメントも聴取しながらENSREGとECが同テストの詳細な評価スコープや手順を作成。「技術的なスコープ」では、福島事故から想起された事象を想定している。

すなわち、@起因事象=地震と洪水、およびその他の大規模な自然災害A続いて発生する安全機能の喪失=所内停電を含めた電源喪失(SBO)、最終的な熱逃し場所の喪失(UHS)、およびこれらの併発B過酷事故対策=炉心冷却機能の喪失防止対策、および喪失後の対応策、使用済み燃料プール冷却機能の喪失防止対策、および喪失後の対応策、格納容器の健全性喪失防止対策、および喪失後の対応策――などである。


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