表土5cm削り取りが有効 農水省が評価 農地除染法の確立目指す

福島の原子力災害収束後に農業者が耕作を再開できるよう、放射能で汚染された農地等を浄化することが喫緊の課題となっているが、農林水産省はこのほど、研究機関、大学、企業などが取り組んできた各種の農地土壌の放射能除去技術について、研究成果を取りまとめた。現地ほ場での実証試験も踏まえた上で、農地土壌除染技術の適用の考え方を整理したもの。

原子力事故に伴い、広範囲の農地が放射性物質に汚染される事態は、これまで国内には例がなく、食料生産の基盤となる農地の除染技術を緊急に確立する必要があることから、農水省では、他省とも連携し、放射性物質の除去技術の開発に取り組んでいる。

今回の成果取りまとめでは、試験研究機関での予備試験を踏まえ、地目(水田、畑などの目的別)、汚染程度等を考慮した上で、福島県の飯舘村と川俣町の現地ほ場において、表土の削り取り、水による土壌かくはん・除去、反転耕による汚染土壌の埋め込み他、実証試験を行い、得られた知見を、土壌の放射能濃度別に整理した。

それによると、稲の作付制限対象区域設定の判断基準としている放射性セシウム濃度5000ベクレル/kg以下の農地については、既に耕作が行われている場合も多く、必要に応じて、反転耕などにより、農作物への移行低減対策、空間線量率対策を講じることが適当としている。同5000〜1万ベクレル/kgの農地については、地目や土壌の条件を考慮した上で、水による土壌かくはん・除去、表土削り取り、反転耕を選択して行うことが適当としているが、同1万ベクレル/kgを超えると、反転耕による希釈も困難となることから、同1万〜2万5000ベクレル/kgの農地については、表土削り取りが適当としている。また、同2万5000ベクレル/kgを超える農地については、表土を薄く削ると、廃棄土壌の放射能濃度が激増する可能性があることから、固化剤による土ほこり飛散防止、被ばく対策など、作業場の安全対策を講じた上で、5cm以上の厚さの表土削り取りを行うことが適当といった評価だ。

なお、ヒマワリやアマランサスなどの高吸収植物の栽培については、有効性が十分に確認できていないため、引き続き実証試験を行い、作物の収穫後に調査結果を取りまとめることとしている。 実際、農業・食品産業技術総合研究機構、日本原子力研究開発機構他による実証試験によると、開花時のヒマワリで、単位面積当たりの吸収量は、作付時土壌の放射性セシウムの約2000分の1となっており、効果は小さいものと見られている。


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