スイス議会上院、脱原子力動議を承認 原子力技術研究は継続へ

スイス議会上院は9月28日、新規原子力発電所の建設を禁止するなど、脱原子力に向けた主要な動議3件を、いずれも3対1の賛成多数で承認した。新設の禁止を「既存世代の原子力発電所」に制限するよう勧告した上院エネルギー環境委員会の修正文言が取り除かれた一方、「すべてのエネルギー技術について、スイスは教育、訓練および研究を継続実施すべきだ」の部分に原子力が含まれることを明確化。これにより、脱原子力政策に消極的な議員も妥協票を入れたと見られている。脱原子力に関する議論は今月23日の総選挙後に下院で再審議され、最終案が採択される予定。原子力支持派の中道右派議員らは、後継議員が今後、原子炉の新設に道を残す可能性に一縷の望みを託している。

スイスの連邦参事会(内閣)は福島事故後の5月、国内の既存原子炉5基は約50年間の運転寿命を終え次第、「2034年までに段階的に閉鎖していく」方針を決定。議会下院がこれを受けて、原子力法の改正により、原子炉新設計画に認可を与えない、内閣が脱原子力政策のシナリオ策定――などの動議を6月に採択していた。

上院の議決内容も、(1)原子力法改正により原子炉の新設に許可を与えない(2)安全基準を満たさない原子炉は直ちに閉鎖(3)再生可能エネルギーの利用やエネルギーの効率化を推進(4)総合的なエネルギー戦略は原子力に頼らない電力供給を保証するとともに、海外からエネルギーを輸入せずにスイス経済を維持できる内容とする――などの部分は下院案と同様。これに加えて、(5)すべてのエネルギー技術について、教育、訓練、研究、国際協力を継続する――などとなっている。

これについて、スイス電力協会は「原子炉の閉鎖までに解決策を探す時間的猶予がある」とし、即座に止めずに済む点を歓迎したが、スイス事業経済連合会は「無責任な判断だ」として反発。環境エネルギー省のD.ロイタード大臣は(スイスの電力需要の4割を賄う)原子力の廃止に疑問を抱くのも無理はないと理解を示しながらも、「重要なのは今始めることであり、政府は将来のために正しいことをするのだと信頼して欲しい」と要請した。


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