除染対策で提言 学術会議

日本学術会議の東日本大震災対策委員会(委員長=広渡清吾・専修大学法学部教授)は9月30日、「復興の目標と7つの原則」(第2次提言)をまとめ、その中で、原子力事故への対応を第一に掲げた上、特に、拡散した放射性物質の測定と除染対策を、緊急に取り組むべき課題として、国に対し、国際社会への情報公開、学術界への協力・支援要請を訴えた。

学術会議では6月にも、「いのちと希望を育む復興」を目標に掲げる震災被災地域復興に向けた提言を発表しており、今回の第2次提言も、これに沿った形となった。

復興に向けての原則としては、前回提言に引き続き、原発問題を筆頭に挙げ、産官学一体となった国家プロジェクトで、被災者救済に取り組むべきとしているが、今回提言では、特に除染対策を緊急課題として、進める上での留意点、技術開発、土壌処理などについて述べ、学術界の参画・協力のもと、世界の安全技術に関する知見を結集し、科学的検討を踏まえて、本格的展開を図る必要を強調した。

作物生産や居住のための除染では、放射性物質が雨水の流れに沿って拡散することから、「生態系に沿った除染対策が必要」と述べており、例えば、農地では基本的に用水系に沿って行うべきとしている。一方、放射性物質が樹木や落ち葉や腐葉土に沈着することから、森林の除染対策が最終的課題となることを懸念している。

さらに、提言では、水田、都市居住空間における除染技術開発や放射線測定の必要にも触れている。今後、除染活動によって大量発生が見込まれる放射能汚染廃棄物については、終末処理対策を早急に立てる必要を求めているが、枝・落ち葉の焼却では、除染目的の達成とエネルギー供給の一挙両得する排煙処理装置を備えたバイオマス発電なども提案している。

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同対策委員会は9月27日、提言「東日本大震災とその後の原発事故の影響から子どもを守るために」を発表した。

提言は、将来のわが国を担う子どものことを第一に、心と体の健康を増進し、健やかな育成を目指すべきとの考えのもと、放射線影響関連では、原子力事故により、低線量被ばくと内部被ばくを受ける可能性が続き、放射線医療を避ける動きが出ているほか、トラウマ性のストレスも生じているという現状と問題点を指摘。

その上で、被災地の被ばく線量を減らすための環境改善を行い、被ばくした可能性のある子どもの線量をモニターし、甲状腺がん・白血病に注目した検診など、子どもの健康を守る施策を講ずる必要を提言している。


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