バランス考え除染作業を IAEA訪日調査団 適切な基準の検討促す

IAEAの除染に関する訪日ミッション(団長=J.C.レンティッホ・スペイン原子力安全委員会放射線防護部長)が14日、全日程を終え、福島原子力災害に伴う日本の除染プログラムについて、9の確認事項と12の助言からなる予備調査報告を細野豪志環境相に手渡した。

一行は、7日に来日、福島県も訪れ、除染技術の実証現場の視察、関連機関との意見交換などを行った。今回報告書は、来日中に取りまとめた予備的なものだが、確認事項の冒頭、「良好」と述べ、国際的な経験共有と教訓に貢献するものとして評価した上で、被ばく量の低減確保などに向け、より適切な基準の検討をIAEAとして支援する姿勢を示している。最終報告は11月15日までに日本に提出されることとなっている。

今回調査に訪れたのは、除染活動に伴う廃棄物処理、放射線防護、計測技術、情報発信など計12名の専門家からなるチームで、チェルノブイリ事故処理の経験者もいる。日本滞在中に、一行は福島第一原子力発電所を訪れたほか、伊達市内小学校の除染モデル実証、飯舘村の農地土壌除染技術現場を視察し、技術支援を行う日本原子力研究開発機構、関係行政機関などと会談した。

今回ミッションの予備調査報告書によると、日本の除染プログラムについて、原子力事故被災者に安心をもたらすべく、「非常に迅速に、法的、経済的、技術的に必要な資源を配分しながら進んでいる」とし、特に、被災地域学校でのPTAボランティアによる活動など、県・地域レベルでの取組みを高く評価しているほか、国がモデル事業を通じて継続的に提供する除染に必要な技術情報「除染技術カタログ」についても、実務的な努力を認めている。

さらに、日本が関係各機関の協力で継続的に行っているモニタリングや線量マップ作成にも言及し、今後の除染活動の基盤となるほか、透明性あるデータの提供を通じ、国民や国際社会に安心感を与える上でも重要としている。

一方、助言としては、まず、被ばく線量の低減確保のため、「除染措置の純益に影響を及ぼす諸要素を慎重にバランスさせることが奨励される」などと述べ、放射線防護の専門家の関与が除染戦略に必要と政策決定者に対して求め、IAEAとして適切な基準検討を支援する姿勢を示している。除染活動に伴い発生する廃棄物については、クリアランスレベルの再検討、既存の産業廃棄物インフラの活用なども求めた。また、今後、課題となると思われる森林地域の除染に関しては、物的人的資源を多く投資する前に、実証試験の結果を活用した安全評価がなされるべきとしている。

報告書提出後、記者会見に臨んだレンティッホ団長ら(=写真)は、政府が8月に取りまとめた除染に関する緊急実施基本方針に示す「推定年間被ばく線量1ミリSv以下」の目標を、「非常にチャレンジング」とし、今後の中間貯蔵の検討に際しても、チェルノブイリ事故の経験を活かした多くの選択肢があることに触れた上で、天野事務局長の「決して独りではない」とのメッセージも述べながら、IAEAとして技術的支援を惜しまない考えを強調した。


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