事故後に支持派が増加 英国民の原子力意識調査

英国科学協会が実施した英国民の原子力に対する意識調査で、福島事故後に支持派の割合が増加するなど、原子力のリスクよりも恩恵の方が一層重要とする見解が多数派を占めていることが明らかになった。また、原子力を容認する男性の数が女性の2倍以上にのぼるなど、性別による技術に対する意見の相違が浮き彫りになっている。

この調査は同協会の委託で世論調査会社のポピュラス社が実施したもの。8月26日から29日までにネットワーク上で無作為に抽出した2050名の成人を対象にインタビュー形式で行ったとしている。

それによると、原子力利用の恩恵はリスクを上回ると答えた人の割合は、「かなり上回る(20%)」と「少し上回る(21%)」の合計で全体の41%だったのに対し、リスクの方が勝るとした割合は全体の28%に留まった。ポピュラス社によると、2010年の調査で原子力利用の恩恵に重きを置く回答者の割合が38%だったことから、支持派の割合は明らかに増加したことになると指摘した。

また、「エネルギー供給保証の問題が改善されるとしたら新規の原子炉建設に賛成しますか」との問いには、回答者の61%が同意。反対意見の20%を大幅に上回る結果となっており、福島事故の放射能汚染により、8万人もの人々が今もなお避難を余儀なくされているという事実を知った後でさえ、英国民にとっては将来のエネルギー供給保証が非常に重要な課題として捕らえられていることが明確になった。

英国では現在、19基の原子炉が稼働中だが、運開後40年を超えるオールドベリー原発を含め、ほとんどが20年以上前に建設されたガス炉。政府は今後10年間に原子力と火力で1000億ポンドの投資が必要との予想のもと、2025年までに複数の原子炉を新設する計画を進めている。

こうした背景から、ポピュラス社では英国における原子力利用そのものについても意見を聴取した。その結果、「既存炉を継続利用すべきであり、炉寿命を迎えたものは新たな原子炉でリプレースすべきだ」とする回答が31%で最も多かったほか、「原子炉の数を増やすべきだ」との意見が23%でこれに続いた。片や、「既存炉の運転は継続するが、リプレースはしない」とする慎重論は21%に留まっており、「すべての原子炉を直ちに閉鎖し、リプレースもしない」という脱原子力派は11%に過ぎなかった。

同調査ではこのほか、福島事故後に脱原子力政策に逆戻りしたドイツの例についても、そうした判断を適切と考えるか否かを問う設問を設けた。すると、全体の49%が「適切な反応」とした一方、51%は「適切ではない」と回答。さらに、「ドイツが2022年までにすべての原子炉を閉鎖する方針を決めた」という事実を認識している対象者に限った場合、「適切ではない」とする回答率は60%まで跳ね上がっている。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで